経費管理クラウド×フルアウトソーシングで間接費削減は可能か?

SaaS型の経費管理サービスを提供するコンカーとNTTデータスマートソーシングが業務提携。今後3年間で従業員数1000人以上の大企業100社にBPOサービスの提供を目指す。

» 2015年04月17日 15時47分 公開
[ITmedia]

 立替経費や出張旅費などの精算作業は従業員にとって“面倒くさい”業務の1つ。とはいえ、業務効率を優先して経費入力を省力化すると経理がルーズになり、一方で規則を強化すれば入力作業が煩雑化するというジレンマに悩まされている企業は多い。

 ITの力を使えば「ガバナンスの強化」と「生産性改善」を両立しつつコストも削減できるのではないか? そう考える欧米企業を中心に利用を広げているのが経費管理に特化したクラウドサービスのコンカーだ。経費の事前申請から発生した経費の登録、支払承認まで一連のワークフローを提供する。

 すでに世界150カ国で導入企業数は3万社以上、約2700万ユーザーの利用実績があるコンカー。米国では年間約4兆円もの経費を処理しており、これは米国全体の1割に当たるという。日本法人も2012年からサービスを開始し、ユニクロを運営するファーストリテイリングや三菱重工、横浜ゴム、クレディセゾンなど20を超える業界で大手企業を中心に導入が進んでいる。

コンカー 日本国内のコンカー利用企業(出典:コンカー)

 4月17日、コンカー日本法人とNTTデータスマートソーシングが業務提携を発表した。コンカーの「Concur Travel&Expense」を用い、NTTデータスマートソーシングが間接費管理のビジネスプロセスアウトソース(BPO)サービスとして、コンサルから導入、運用、サポートを一括して請け負う。その狙いは何か?

従業員1000人以上の大企業の間接費を改革する

 「従業員数が1万人程度の企業の場合、経理を担当するスタッフが10人程度いる。この人たちは『間違った金額』が経理システムに計上されないように最後の関門として労働集約的なチェック作業に携わっている」というのは、コンカー日本法人の三村真宗社長。同社の試算によれば、コンカーを導入することで経費規定のチェックなどが自動化され経理業務の6割が省力化できる。

 これだけでも大きなコスト削減となるが、4人程度の経理担当者は残る。そこで、その部分も含めてNTTデータスマートソーシングがBPOサービスとして請け負うことで、人件費よりも安い金額で経理システムを運用できるというわけだ。また、これまで業務部門の負担となっていた請求書や領収書の入力作業の代行も行い、生産性向上にも寄与するという。

コンカー コンカーとBPOサービスによるコスト削減(出典:コンカー)

 さらに、出張旅費の最適化にも言及。クレジットカード会社や旅行代理店などとの提携も視野に入れ、ビジネストラベルマネジメントサービスも提供する。これまで出張者が各自でバラバラに提出していた申請データなどを基に航空会社やホテルの集約などを行い費用を圧縮する。

 両社が当面の3年間でターゲットとするのは、従業員1000人以上の大企業。米国発のクラウドサービスであるコンカーは、多言語、多通貨に対応しており、グローバル展開する企業でも経理システムの集約化とガバナンス強化というメリットが見込める。まさにこの点はファーストリテイリングがコンカーを導入した決め手ともなった(参考記事)

 NTTデータスマートソーシングの和田泰之社長も「国内の中小企業をターゲットにするならば、同様のクラウドサービスを提供する日本のベンチャー企業も選択肢に入る。だが、グローバル展開をしているような大企業にサービスを提供するならコンカーと組むしかないと判断した」という。

コンカー 世界共通の基盤の上に地域ごとのカスタマイズ環境を作ることで標準化と均質化が実現(出典:コンカー)

 コンカーとNTTデータスマートソーシングでは7月から営業を開始し、9月からBPOサービスを提供する予定。今後3年間で従業員数1000人以上の国内大手企業100社(初年度20社)の受注を目指す。

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