勝敗を分ける“すばやい判断と采配”、Surface Proが後押し――NFLにもIT化の波

アメリカの国民的スポーツ、アメリカンフットボールのプロリーグ「NFL」にもIT化の波が押し寄せている。チームの勝敗を左右する監督の采配を支援しているのは「Surface Pro」。ゲーム分析に一役買っている。

» 2015年04月20日 13時30分 公開
[末岡洋子ITmedia]

 アメリカの国民的スポーツ、アメリカンフットボールのプロリーグ「NFL」。チームの勝敗を左右する監督の采配を、タブレット端末が支援しているのをご存じだろうか。NFLは組織を挙げてタブレットを導入し、ゲームの分析に活用。試合の画像をすぐに得られるソリューションは、プリントの手間がかからず管理もしやすいことから、コーチや選手に好評だという。

Photo 雨天でも利用できる特別仕様のSurface Pro 2

 プロスポーツの世界では、データや通信技術の活用が進みつつあり、NFLもその一環として2013年にMicrosoftと提携している。この提携は「Xbox One」端末上でのNFLの試合閲覧など包括的なもので、この中にコーチや選手、審判、医療担当チームによる「Surface Pro」の活用も含まれている。こうした背景から2014年、コート脇サイドラインでのタブレット活用が始まった。

 アメフトはポジションが細かく分かれたスポーツで、フォーメーションが勝敗を分ける重要な要素となる。このフォーメーションの調整に役に立つのがプレイを確認するための写真データだ。

 NFLのスタジアムには、守備と攻撃のスクリメージライン付近で接写するカメラと、離れて試合全体をとらえるカメラが設置されており、この2台のカメラで捉えた画像を試合中のチームに提供している。

 コーチや選手はこれまで、モノクロでプリントしたカメラ画像をチェックしながら戦略を立てていた。チームのスタッフが画像をプリントして順番に並べ、コーチに届けるのに要する時間は約30秒と、決して遅いわけではない。しかし、迅速な判断が勝敗を左右することから、「この時間をもっと短縮できないか」という声が現場から挙がっており、Surface Proの導入が決まったという。

 NFLが利用しているのは「Surface Pro 2」。ハードもソフトもNFLのニーズにあわせてカスタマイズされている。鮮やかな水色のカバーに包まれたハードウェアは、炎天下でも雨の中でも利用できる全天候対応型で、映り込みによる画面の見づらさを軽減する反射防止対策を施している。

 端末には独自開発したソフトウェア、「Sideline Viewing System」(以下、SVS)をインストール。コーチや選手は専用の無線通信を使い、カメラから送られる高精細なプレイ画像を素早く入手できるようになった。画像の入手にかかる時間は、これまでの30秒から4〜5秒まで短縮。ほぼリアルタイムで画像を得られるようになった。

 メリットは、すぐに画像データを得られるだけではない。SVSには、コメントやチーム単位でのプレイ分類、サマリービューなどの機能も実装されており、データ活用の幅が広がったという。

Photo NFLのゲーム分析で活躍するSurface Pro 2

 Surface Pro 2は、NFL第49回スーパーボウルの王者に輝いたニューイングランド・ペイトリオッツをはじめとするNFL加盟32チームに支給され、コーチと選手の活躍を支えている。ニューヨーク・ジャイアンツのクオーターバック、ライアン・ナシブ選手は米Newsdayの取材に対し、「さまざまな角度から見た画像を得られるのはとても助かる。画面に複数の写真を表示できるのも便利で、チームの役に立っている」とコメントしている。

 NFLは今後、タブレットのさらなる活用に踏み出す意向だ。2015年1月に開催されたオールスターゲームのPro Bowlでは、ビデオ判定にSurface Proを使うことが決まっている。NFC側は判定が難しい時にビデオを用いる判定プロセスを迅速化できると期待しており、今後、レギュラーシーズンでの活用に向けた取り組みを進めていくという。

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