リーダー、プロマネが知っておくべき「会議のキホン」そのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2015年04月23日 08時00分 公開
[岩淺こまきITmedia]
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部下が決定に関われる環境や仕組みを用意する

 逆に部下が質問をする、意見を言うといったプロセスを踏むことで、彼らはその決定事項に納得して「自分ゴト」として取り組めるようになります。自分が多少なりとも決定に関わったという“責任”が生じるためです。以前、この連載で取り上げた「コミットメント効果」と同様に、責任を感じることで“目標に向かう行動力や努力が増す”傾向があるのです。

 会議の決定事項という“本質”から離れた話だと軽視する人もいるかもしれませんが、本質から離れたところでモチベーションを下げてしまうのももったいない話です。決定事項を成果に結びつけたいならば、会議に部下が関われる仕組みや環境を整備する必要があるのです。「今日はみんなの意見を聞かせてほしい!」を言える工夫をしてみてください。先ほどの例で考えるならば、次のような方法が考えられます。

(A)現状報告

 「では、事前に共有していた、各班の現状報告について、質問があればお願いします」

 ただの現状報告なら、先に資料を配って読んできてもらいましょう。会議当日は質疑応答のみにすれば疑問も解消できるし、部下も必要に応じて質問できます。一般的な会議で最も時間短縮が見込めるのは、この現状報告の部分でしょう。

(B)リーダーからの連絡事項

 「会社からの連絡事項を報告します。私達のチームは今後●●を重点的に取り組んでいきます。疑問があれば、今でも後でも教えてほしいです」

 部下と十分にコミュニケーションを取り、不安や疑問を解消することが、納得感を高める唯一の方法です。上からの決定事項や方針は基本的に覆せないものですが、それを一方的に言い放てば、部下には「やらされ感」しか残りません。

(C)課題に対してのアイデア出し

 「来期の提案プランを考えるという件ですね。あらかじめ、考えておいてもらっていると思うので、順番に話してください」

 こういったアイデア出しの場面では、できるだけ会議前にテーマを告知して、宿題にしておくのが望ましいです。個々人があらかじめ課題に向き合っている分、レベル感がそろった話し合いがしやすくなります。

 突然のフリに答えるのが苦手な人でも、事前に考える時間があれば、落ち着いて発言できるものです。ポイントはアウトプットを何かしら持ってきてもらうこと。「考えておいて」と言うだけでは、事前に考えず、その場の勢いで乗り切ろうとする人が出てきてしまうためです。

(D)そのほか連絡事項、クロージング

「今日の会議でやったこと、決まったことを確認すると……(と3分程度で振り返る)。来週に向けてそれぞれのタスク、よろしくお願いします」

 最後にきちんと会議のまとめをすると、伝える内容が誤解されて伝わるというリスクを減らせます。ちなみに、会議全体を通して“時間がないから……”という言い訳は避けた方がよいです。リーダーとしての信頼や尊敬を損ねるばかりか、自分の時間管理能力の低さを示すことになりかねません。


 ここまで読んできた皆さんなら分かると思いますが、会議でリーダーが一方的に話しているという展開は避けたほうがよいでしょう。さまざまな内容を話し続けると、自らもそれが伝わっているのか不安になって、詳しく説明しようとするうちに時間がなくなり、早口になって誰も内容を理解できない――という悪循環に陥りやすくなります。

 上記のような仕組みで、部下が意思決定に参加できる環境を整えれば、自然とリーダーが一方的に話すことは減り、全員参加型の会議運営になります。皆の納得感が高まれば、成果に結び付きやすくなりますし、会議の時間も短くなるはず。ダラダラと無意味な会議を続けることはないのです。

今回のまとめ

Q:会議の決定事項にしっかり取り組まない部下がいて困っています。

A:部下が決定事項に対して、納得感が得られるようにしているでしょうか。リーダーが一方的に内容を伝えるのではなく、意思決定に部下が参加できる仕組みを整えることで責任が生まれ、成果も上がりやすくなるはずです。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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