会議が始まると、「人手不足」だけでなく、さまざまな業務改善についての話題が飛び交っている。どちらかというと経営戦略的な話ばかりで、ちょっと退屈……。晩ご飯は何にしようかなぁ、とか、アレは、どれぐらい売れたのかしら? とか、余計なことを考えていたら……いきなり、私の名前が呼ばれた。
わたし 「はい?」
ま、まずい。話をちゃんと聞いてなかった……。
偉い人 「というわけで、在宅ヘルプデスク部門開設プロジェクトの、プロジェクトマネジャーをお願いします。」
わたし 「はいぃぃ!?」
なんですって!? 在宅ヘルプデスク部門開設プロジェクトのプロジェクトマネジャー? プロジェクトの「プ」の字も知らない、この、私が?
なんか間違ってない? 頭は真っ白、心はパニック。
わたし 「いやいやいや、待ってください。私はただのヘルプデスクですよ。プロジェクトマネジャーなんて、できません。いや、任せるほうがおかしいでしょ。おかしいと思いませんか、会議にご出席の皆さん? ここは、上司のAさんが担当すべきでしょう? 私がプロジェクトのメンバーっていうのなら分かるけど……」
――と、こんなふうに、私はその場にいたエライ人たちに進言……できなかった。いや、そんな心の余裕はまったくなくて、金魚のように口がパクパクするだけ。
まるであの時と同じ……つまり何ですか? 私は、こういう時の仕事を押しつけられやすい体質なのか?
そんな心の叫びがエライ人たちに伝わるはずもなく、私の意図とは違う形で会議は終了した。結局、私は、在宅ヘルプデスク部門開設プロジェクトのプロジェクトマネジャーに任命されてしまったのだ。
抗議しようにも、一緒に会議に出席するはずだったAさんは急な仕事で外出中で、夕方まで帰ってこない(きっと、わざとだ……)。アタマを強制再起動するために、そしてAさんに抗議するために、私は外出から戻ったAさんと、おなじみの同僚A子を誘って夜の街に繰り出した。
飲み会では、お酒の力も手伝って、昼間の鬱憤(?)が一気に噴出。
わたし 「Aさん! 自慢じゃないですけど、わたし、プロジェクトをどう動かしていいのか、右も左も分かりません!」
Aさん 「まぁまぁ、そう言わずに。うちの部署じゃ、経験も実績も一番豊富なのがキミなんだから」
それ……遠回しに「トシくってる」って言ってない?
Aさん 「実際には、私は今回の業務改善プロジェクト全体の面倒をみないといけない。キミにお願いしたい『在宅ヘルプデスク部門』の開設プロジェクトは、大きな業務改善プロジェクトの中のサブプロジェクトみたいなものなんだよ。規模はそんなに大きなものじゃないし、プロジェクトマネジャーといっても、サブプロジェクトのリーダーみたいなものだからね。細かいところは手助けするから、頑張ってよ」
わたし 「そうはいっても、わたし、プロジェクトの責任者なんて初めてですよ?」
A子 「もう、決まったことなんでしょ? あきらめて新しいお仕事も頑張ろうよ」
まったくA子ってば、人ごとだと思って……。
Aさん 「どうしても不安だというのなら、PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)の勉強をしたらいいよ」
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