NTTコムウェアが“タレントマネジメント”を導入した理由「IT×人事」の新潮流(2/2 ページ)

» 2015年04月27日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
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日本企業がタレントマネジメントを導入するには?

 新たなシステムを選ぶ上でポイントとなったのは、従来の人事システムに追加をする形でシステムを作れることだ。

 「日本型人材マネジメントが抱える課題に対して、競争主義を中心とした、欧米型の人材マネジメントを取り入れれば解決するかと言えば、そう簡単な問題ではありません。日本型人材システムのメリットは踏襲しつつ、課題を解消するのが理想的です」(河本さん)

 新システムとして、オラクルのSaaS型人材管理ソリューション「Oracle HCM Cloud」を導入することに決めたのは2014年12月のこと。サービス選定が難航し、新たなシステムを決めるのに1年以上の年月を費やしたという。クラウド型で少ない投資額でスタートできること、会社の組織図(組織ツリー)をそのまま適用できることが選定の決め手となった。

photo 今までの人事システムに追加する形で「Oracle HCM Cloud」を導入。各社員が持つ資質を可視化、共有するという

 河本さんは日本企業がタレントマネジメントを導入するには、いくつか注意すべき点があると話す。「タレントマネジメント導入を進めるには、強力なトップダウン型のリーダーシップと地道な現場のヒアリングが必要です。人材やスキルの定義は一度行っただけではダメ。現場のフィードバックを受けながら何度もブラッシュアップしていかなければなりません」

 また、海外で採用した人材については、彼らの実力を把握した上で実力に見合った役割や報酬を与えることも重要になる。「日本型の継続した育成は海外でも評価は高いです。優秀な人材を育成することで、中長期的に優秀な人材を採用しやすくなります」(河本さん)

才能の“発見+共有”で発展し続ける会社づくりを

 Oracle HCM Cloudを導入した新システムは、2015年3月から試験的な運用を開始、2015年度中に本格的な運用を始めるという。現在は各社員のスキルやキャリア情報をクラウド上に集めて可視化、それを人事担当だけでなく、現場のマネージャーに共有しているそうだ。現場のマネージャーが人事権を持つ欧米型の人事マネジメントに一歩近づく形と言える。

photo Oracle HCM Cloudを導入したことで、人事業務のフローが変化した

 「各社員の資質を共有する『タレントシェアリング』のほか、社員がSNSなどで自分のスキルについて発信できるセルフプロモーションのような施策も進めています。スキルの可視化を進めて、人材配置に活用するところまで進めるのはこれからの課題ですね」(河本さん)

 自社でタレントマネジメントを試した後は、そのフィードバックをNTT本社に報告し、NTTグループ全体でのタレントマネジメントの導入につなげていくのがNTTコムウェアの目標だ。「業務の“延長線”のような形で日ごろからデータを蓄積し、いつの間にか評価シートが作られているという状態にしたいですね」と河本さんは話す。

 「今いる会社でその才能が見出されないまま、消極的に転職をしてしまう例をいくつか見てきました。確かに日本人は真面目で、皆のがんばりが企業を支えてきた側面はありますが、これからは会社が従業員一人一人の才能を伸ばすことがより重要になります。企業の継続した発展にはタレントマネジメントが欠かせない時代がもう来ているのです」

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