Citrixが見せた、IoTアプリと“近未来の会議”5年越しの「Workspace Cloud」披露(2/3 ページ)

» 2015年05月14日 23時00分 公開
[末岡洋子ITmedia]

運用管理を分離し、ワークスペースを容易に作成できる――「Workspace Cloud」

 既存製品の強化を発表したテンプルトン氏は、「クラウドについて話そう」と切り出し、Citrix Workspace Cloud開発の経緯を話した。5年前、社内に“Cloud App Delivery”チームを設け、XenAppをサービスプロバイダ向けのクラウドに再構築できないか検討したのが始まりだそうだ。

 その後“Blackbeard”というリファレンスアーキテクチャを設計し、アプリオーケストレーション、コントロールパネルなど拡張性、柔軟性を加えた“Rainmaker”へと発展した。これにサービスプロバイダライセンスプログラム(DaaSを提供するサービスプロバイダ向けのプログラム)を加えた。現在、約1900社がXenAppやアプリオーケストレーション上に構築されたサービスを提供しているという。コンテンツプロバイダの数は年35%のペースで成長しており、「クラウドへの理解が深まった」とテンプルトン氏は述べる。

 次のステップとして、アーキテクチャ側に“コントロールプレーン”を加えた。これは「制御にまつわる複雑性を解消する」もので、クラウドベースのコントロールプレーンにより、パートナーや顧客はワークスペースサービスを安全かつ統合された形で配信できるという。これに“Project Avalon”として開発したハイブリッドクラウドプロビジョニング技術を加え、Citrix Workspace Cloudは完成した。

photo Citrix Workspace Cloudのデモ。ワークスペースの構成要素、リソース、ドメインなどを指定して構築できる

 包括的なワークスペースの作成、統合、配信、管理のためのプラットフォーム機能、クラウド、オンプレミスなど柔軟な実装オプションなどの特徴を備えており、IT管理者はこれを利用してデバイスやネットワークに依存することなく、ユーザーに合わせたワークスペースを提供できる。

 技術的には、Microsoftのクラウド「Azure」を土台とし、Citrixがその上のコントロールプレーンを管理する形をとる。このコントロールプレーンこそがWorkspace Cloudの最大の特徴であり、特定のユーザーやグループに対してアプリ、データ、ファイルなどを組み合わせてワークスペースを作成し、どのクラウドやデータセンターのリソースを利用するかを指定できるという。

 コントロールプレーンの大きなメリットは、運用管理の簡素化やコスト削減だ。「顧客はオンプレミス、クラウド、ハイブリッドなどさまざまな環境で実装したいと考えており、これからはハイブリッドが主流になるとみている。このような複雑な環境で、Workspace Cloudは容易に設定できるパワフルなフロントエンドとなる」と、デモを行ったCitrixのWorkspace Cloud担当ゼネラルマネージャー兼バイスプレジデントのジェス・リプソン氏は述べた。

photo IT管理者がリソースなどを設定すると(左の画面)、ユーザーのReceiverに反映された(右の画面)

 同氏によると、すでに一部の顧客とWorkspace Cloudの試験運用を開始しているという。その1社として、Bell Helicopter、Cessna Aircraftなどを傘下に持つコングロマリット「Textron」をステージに招いた。XenApp、XenDesktopなどを利用している古くからの顧客であるTextronは、Workspace Cloudを採用した理由について、「レガシー環境を維持しつつ、クラウドで統合した管理が可能になる」と述べた。

 Workspace Cloudは、2015年第3四半期に提供を開始する予定だ。基調講演後のプレス向けセッションでリプソン氏は「Workspace Cloudは、技術的にはまだ大規模向けではない」としながらもハイブリッド実装のトレンドから、中小企業だけでなく、Textronなどの大企業向けにもニーズがあるとの見解を示した。将来的には、マルチテナントのサポートも計画しているという。

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