MS本気「Surface 3」 法人PC市場へのインパクト(2/2 ページ)

» 2015年05月19日 20時00分 公開
[岩城俊介ITmedia]
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Surface 3、「業務PC」としての資質と選定要件

 自社の業務PCを選定する情シスにとって、Surface 3は業務PCとしてどうか。

 仕様上のメリットは前述した。オフィスでも、外出先でも、いつでも、どこでも。2in1スタイルで、従業員が望むワークスタイル改革、業務の効率化が望めるといった基本部分はともかくとして、まずは発売タイミングはどうか。例えば「2016年度導入用」とすると、半年ほど選定/導入準備期間を設けつつ、2016年2月〜3月頃の納入に間に合わせられる。

 OSのバージョンはどうか。法人向けモデルの初期OSは64ビット版Windows 8.1 Pro Updateとなる。「Windows 7」や32ビット版を選定条件とする企業もまだ多そうだが、Windows 7プリインストールのメニューは記載されていない。

 ただし、2015年7月に登場予定とするWindowsの新バージョン「Windows 10」の兼ね合いも情シスとしては考えざるを得ない。Surface 3は、当然Windows 10へアップグレードできる。Windows 10への「1年“無償”アップデート」は、Windows 8.1 Proも対象である(一応、Software Assurance顧客を中心とするWindows 7/8系のEnterpriseエディションは、無償アップデートの対象外)。Windows 7から10への移行を計画しているとしても、発売から1年の無償期間があるならばどうだろう。タイミングとして悪くない時期と言えそうだ。

 ラインアップはどうか。法人向けモデルはLTE内蔵とLTEなしのWi-Fiモデルを用意し、それぞれストレージ容量が異なる2バリエーションの全4モデルがある。価格は64Gバイトストレージ/4GバイトメモリのWi-Fiモデルで6万8800円から、LTE内蔵モデルは7万8800円から。選択肢がシンプルなのでここで悩むことは少なそうだ。これに着脱キーボード(Type Cover:1万5800円)やペン(5980円)、オフィス作業用のドッキングステーション(2万3650円)などの周辺機器を部署やメンバーの希望、業務内容などに応じて取捨選択できる。

photo 法人モデルは6万8800円から

 LTE通信機能については、これからの従業員ニーズをかなえるため「できれば搭載」を選んでほしいとマイクロソフトは述べる。今後、業務シーンでモバイル化とクラウド化が急速に進む。これには「どこでも、いつでも」のネット環境が不可欠だからだ。2020年のオリンピック東京開催に向け、公共交通機関や都市部、観光地での公衆無料Wi-Fi化なども広がっているが、公衆Wi-Fiだけで外出時対応のすべてをカバーするのは現時点、難しい。LTE通信機能は、よりスマートかつ安全(リモートワイプ対応など)に従業員のワークスタイル改革を実現するために必要と位置付けられる。

 ちなみにSurface 3のLTEモデルに、SIMロックは施されない。日本向けモデルはLTE Band 1(2.1GHz ドコモ/au/ソフトバンクが使用)/3(1.7GHz ドコモ/1.8GHz、Y!mobileが使用)/8(900MHz ソフトバンクが使用)の周波数帯に対応する。ソフトバンク系以外のキャリアのLTEネットワークで使うには少し不都合があるかもしれないが、SIMロックそのものはない。格安SIMを中心とするMVNOのサービスを使うなど、ここも自社の業務デバイス選定でポイントになりそうな部分だ。

 個人向けモデルと違い、法人向けモデルにはMicrosoft Officeは付属しない。所持するライセンス版やすでに「Office 365」を導入済みならばがあればそれを使えばよく、社内のモバイル対応やさらなるコミュニケーション基盤を強化できるものとして、デバイスと“一緒”にOffice 365へ刷新してしまう方法もよいだろう。

photo ソフトバンクモバイルは、Surface 3向けの法人向けメニューを提供する以外に、ソフトバンク・テクノロジーなどグループのSIerもそれぞれを組み合わせたソリューションを用意するはずだ

 ソフトバンクモバイルとの戦略的パートナーシップは、この端末+サービスを組み合わせた「業務PC関連一式」を一元化できることが情シスにとってメリットだ。LTEの通信環境や料金プラン(法人タブレットプラン/法人データシェア)のほかに、グループ企業のSIであるソフトバンク・テクノロジーやソフト卸のソフトバンクコマース&サービスなどは、これらと連携した業務ソフトウェアの導入(Office 365など)、ネットワーク/セキュリティ対策(シングルサインオンアドオンやアクセスポリシー、指紋センサー/物理セキュリティデバイス、モバイルデバイス管理など)といった自社の事情に沿った「業務PC関連一式」ソリューションとして提案してくれるはずだ。

 情シスにとって、業務PCの選定をメーカーの法人営業担当者と直接行う、直販サイトで注文する以外に、自社の事情に合わせて一括注文するだけにリセラーや販売パートナーなどと行う。デバイス、ソフトウェア、通信とその周辺を一式で──。急速に進むモバイル化、クラウド化対応を想定すべき法人PC市場において、じっくりとこの環境を整備した背景にマイクロソフトの意気込みが伺える。

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