中小企業のIT投資、失敗を防ぐために知っておきたいこと(2/2 ページ)

» 2015年05月20日 09時00分 公開
[末岡洋子ITmedia]
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 同様のニーズは多く、すでに、東京・渋谷に拠点を置くモバイルゲームベンチャーがデルのシステムを導入している。同社は、事業の拡大と社員の増加に合わせて増設してきた業務システム向けのサーバを、デルの中小企業向け統合型インフラ「PowerEdge VRTX」に統合した。VRTXはサーバ、ネットワーク、ストレージを1台に統合した小型データセンターで、ブレードサーバーにブレードを継ぎ足す感覚で容量を追加できる。

 大きなメリットとなるのはコストだ。「初期導入費用を低く抑えられ、運用管理も効率化できる」(原田氏)。ほかにも、どこで問題が起きているのかを一元的に把握できるようになり、電源やケーブル周りもシンプルになるなど、運用・管理面のメリットももたらした。

Photo システムの拡大、縮小を柔軟に行える中小企業向け統合インフラ「PowerEdge VRTX」

 VRTXは2013年に提供を開始して以来、中小市場のヒット製品となっている。建築業界でHPC(高性能計算)分野にVRTXを利用する事例では、地震による影響や波の計算などシュミレーションで、それまでのPCクラスタ環境で5日を要していた処理が2日で終わるなど、処理能力が大きく改善されたという。

 「中小はリスクをとりにくい企業が多い。成長する中で“いかにして次に備えるか”を考えるにあたって、リスクを分散しつつ柔軟性のあるソリューションを提案する必要がある。デルはさまざまな事例があり、成長段階に応じて最適なソリューションを提案できる」と原田氏は強調する。

中小企業には“事業の成長段階に応じた提案”を

 デルのもう1つの強みが、長年のPC事業で培ってきた直販のノウハウだ。業種も業態もニーズも課題もさまざまな中小企業のシステム導入と運用は、きめ細かいサポートが必要となる。しかし、所在地が全国各地にあるため、外勤の営業だけでは対応が難しい。

 顧客との最初の窓口を務める内勤営業のスタッフが企業規模の大小にかかわらず、電話で相談や提案、見積もり、技術サポートまで対応。一方で、外勤スタッフは顧客訪問を通じて課題やニーズの直接的なヒアリング、パートナー戦略の推進といった役割を担っている。IT管理者が不足していることの多い中小企業については「困ったときにはすぐ、電話がつながる」内勤営業の対応へのニーズが高いと考えている。

 PCベンダーとしてスタートを切ったデルだが、今では業務に必要な各種サービスも取りそろえたソリューションプロバイダーとして事業を展開している。そんな同社の中小企業向け戦略のコアとなるのは、PCの導入をきっかけに、顧客の事業の成長に合わせてサーバやストレージ、ネットワークソリューションを提案するというアプローチだ。

 原田氏はまた、現職への就任後に、内勤営業を進化させる取り組みも始めている。内勤営業スタッフの顔を写真入りで紹介したり、イベントスタッフに起用したりすることで、顧客と直接対面する場を増やしているのだ。取引先からも、「一度顔を合わせると関係性がぐっと深まる」という声が挙がるなど好評で、今後も新たな取り組みを進めていくという。

 中小市場について、「お客さまの成長と共に成長し、成功する過程を共に経験できる魅力的な市場」と話す原田氏は、2015年度はさらに中小市場に注力する方針だと話す。「昔から中小市場に注力しており、この市場ならではの課題を深く理解している。これまで蓄積してきた知識と経験を生かして、信頼されるITのパートナーになりたい」(原田氏)

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