ぴんぼっくの“分からない連鎖”、どう攻める?女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(2/3 ページ)

» 2015年05月29日 13時00分 公開
[鐙貴絵ITmedia]

 で、結局「憲章」というのは、守るべきことを定めた、根本的な取り決めのことなのね。つまり、プロジェクトについていろいろと重要なことを取り決めて書いておくものらしい。でも、それは「憲法」も同じなんじゃないの? ええい、ここは勝手に、「国家レベルでの取り決めが憲法で、会社とか組織とか団体レベルでの取り決めが憲章」っていうことで折り合いをつけておこう。頭の中に「いいのか?」という文字がよぎったけれど「いいのよ!」と押し切った。

 さてさて、辞書との格闘はこのくらいにして(じゃないと、なかなか先に進まない)、eラーニングに戻らなきゃ。参考書を読み進めてみると……なになに?

「プロジェクト憲章は、プロジェクトの発足を公式に認可する文書である」

 え? 誰に認可してもらうの? そもそも、この間の会議で在宅ヘルプデスク業務開設プロジェクトはゴーサインが出ているのだから、すでに認可されているじゃない。そのおかげでこんなに苦労しているっていうのに……。

 せっかくのやる気が、真夏の雪だるまのように溶けていく。同じ溶けるなら脂肪が溶けてくれたらいいのに。

 そこに、のんきな同僚A子がやってきた。私はちゃんと区別がついているけれど(当たり前だ)、読者のみなさんは、AさんとA子を一緒にしないでね。(しないか?)

A子 「頑張っているねぇー」

 私の記憶が正しければ、A子ってば、あの会議の日に諸悪の根源(?)Aさんをあおったよな。心の中で八つ当たりしつつ、顔はヘルプデスクスマイル。私って、嫌なヤツ?

わたし 「早いとこ進めないとね。仕事だし」

A子 「あなたも大変だけど、私も大変なのよ。今度の社員旅行の幹事なんだけど、相談に乗ってぇ。お願い! 実は、計画を立てなければならないのよ。明日までに」

わたし 「明日? そこまでほっとくか?」

A子 「えっと、ほら、ね、つい……。だって、面倒じゃない」

 面倒、で済んだら、プロジェクトマネジャーはいらないのだよ、A子。

A子 「忙しいのは分かってるけど、手伝ってよぉー。ヘルプデスクっていうんだから、私のこともヘルプしてよ。昼休みだし、いいじゃん」

 うーん、今のがダジャレだったら、20点。

 A子はいつもマイペース。まぁ、私も考えがごちゃごちゃしていたところだったし、気分転換を兼ねて30分ほどアイディア出しだけでも手伝うか。

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わたし 「まず、誰がどこに行くことになってるの?」

A子 「ええと、私の部署20人が対象ってことになってるんだけど、実際には行かない人もいるから、まだ何人が行くかは決まってないの。行き先も、どこにすればいいのかよく分からなくって」

わたし 「予算は?」

A子 「それもまだ決まってないのよ。会社からは1人あたりいくらかの補助が出るらしいんだけど」

わたし 「で、そもそもその社員旅行の目的は? 単に親睦を深めるため? それとも、部署の重要なミーティングを兼ねてたりするの?」

A子 「目的? 社員旅行は社員旅行でしょう? 目的って何よ?」

 だめだこりゃ。何も決まってないどころか、当のA子が社員旅行の方向性さえ打ち出せてない。単に「社員旅行やるから、集まってくださーい」では、社員旅行は成立するわけないじゃない。第一、そんなものに会社だって経費はかけたくないだろう。


 そんなこんなで、30分。

A子 「ありがとぉー。あとはこっちでまとめるわ」

 当たり前だ。A子、これはお前の仕事なんだよ。足取り軽く部署に戻るA子を目で追っていて、ふと気がついた。

 あれ……。あぁ、そうか。何かを“やりましょう”と決めたところで――この“何か”は在宅ヘルプデスク開設業務だったり、社員旅行だったりするわけだけど、ものごとが勝手に動き出すものではないよね。また、予算やスケジュールだって、いきなり決められるようなものでもない。

 責任者は誰なのか、どういう方針で進めるのか、どういう前提があるのか、どういう制約があるのか、何をもって成功とみなすのか、というような「青写真」を描いてから、その青写真に沿ってひとつひとつ計画を立て、実行に移す必要がある。

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