チームは“生もの”、管理しないとすぐ腐るそのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2015年06月11日 08時00分 公開
[岩淺こまきITmedia]
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勝手に乱立する「俺ルール」「私ルール」に注意

 会議の進め方やタスクの振り方など、当初はリーダーが規範として設定したのでしょうが、時がたつと、メンバーは自分達が動きやすいようルールをアレンジしたり、独自のルールを作ったりします。こうした新ルールは明文化されることなく、“暗黙知”としてチーム内にたまっていくのです。

 暗黙知が生まれる際、チーム内でパワーの強いメンバー(地位や年齢、年次などいろいろな要素がありますが)の影響力が大きく関わってくるため、この暗黙知は特定のメンバーに都合のよいものが生まれます。そのため、ケースBのDさんのように立場の弱い人が不利益を被ることになりかねません。リーダーはこのような暗黙知を見過ごさないことが大切です。

 この状況を解消するにはどうしたらいいか。その方法はただ1つ、「現時点での公式なルールを伝える」ことです。各メンバーは性格や抱えている事情が異なります。普段から面談を行うなどして、コミュニケーションを密にとり、介護や育児、外からは見えない持病や家族のこと、本人のモチベーションなどをつかんでおくことが大切でしょう。

photo チーム内に暗黙知が増えると、それだけトラブルも多くなります

 例えば、毎日無言で17時に猛ダッシュで帰るマイルールを持っているメンバーがいたとします。そのふるまいに周囲がネガティブな反応を示しているとすれば、それを放置するとチームが第2段階の「Storming」に逆戻りしてしまいます。

 そんなときにリーダーから「Aさんは家の事情があり、それが落ち着くまでは残業なしにします。すみませんが、少しの間Aさんをサポートしてあげてください」と話せる範囲の事情と暫定のルールを告知すれば、他のメンバーは「なんであの人ばっかり?」「何かあったのかな?」といった不満や疑問に惑わされず、仕事に集中できるようになります。

 また「13時にきちんと業務を開始してほしい」といった当たり前のルールでも、“なあなあ”になってきたと感じたら、あらためて「就業時間は守りましょう」と声に出して確認してみましょう。面倒に思うかもしれませんが、これが非常に有効なのです。

チームは「生もの」と考えよ

 ここまで読んだ方の中には、せっかくルールを作って「Norming」まで進んだと思ったのに、ちょっと気を抜いたらすぐ「Storming」に戻るとは、なんて面倒なんだろうと思う方もいるかもしれません。しかし、これは“普通”の状態だと言えます。

 チームとは、人と人とが集まってできるもの。ちょっとしたことでも、人間の感情は大きく揺れることを考えれば、チームの状態(モチベーションやメンバー間の関係性など)が一定に保たれることはないと言っても過言ではありません。

 ここまでチームの状態を、タックマンモデルの段階に分けて説明してきましたが、1日の中でもその段階は変わります。Normingだと思っていたら、他のメンバーが休みだと知った途端にStormingに戻ったり、ランチ食べた後に眠くなって、やる気が出ないメンバーが増えてFormingになってしまったり……といったこともあるかもしれません。

 状況によって、少しの声かけで解決する場合や、しっかり時間をとってコミュニケーションをとらなければならない場合など、その対処はさまざまです。手を入れずに放っておくと、すぐに腐ってしまう――チームというものは「生もの」だと考えましょう。だからこそ、チームの“安定稼働”には、リーダーの絶え間ないメンテナンスが求められるのです。

今回のまとめ

Q:チーム内のルールを決め、安定期に入ったと思ったのですが、いまいちパフォーマンスが上がりません。一部でルールをなあなあにしてしまう動きも見えてきましたが、どうすればいいでしょうか?

A:メンバー各自が「マイルール」を決め、ラクな方に逃げつつあるのかもしれません。再度ルール化を図ってください。チームは“生もの”のように状況が日々変わります。チームの“安定稼働”には、リーダーの絶え間ないメンテナンスが求められるのです。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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