なぜ日立はIT事業の構造改革を急ぐのかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年06月15日 17時45分 公開
[松岡功ITmedia]
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ビジネスに直結する“上流”のサービスが決め手に

 一方、プラットフォーム事業は、システムソリューションのベースになる「サービスプラットフォーム」の強化が眼目となる。齊藤氏は「プラットフォーム事業はこれまで当社が勧める製品やサービスを提供してきたが、これからはユーザー視点で求められるサービスコンポーネントやアナリティクスなどの最新技術を柔軟に利用できるサービスプラットフォームの提供を中心に据えるべく、事業構造を改革していく必要がある」と説明した。(図2参照)

photo 図2:プラットフォーム事業のポートフォリオ転換(出典:日立製作所の資料)

 同氏によると、事業構造の改革によって、2014年度で製品が65%、システム構築および通信機器が35%だった事業の割合を、2015年度はサービスで40%、製品で30%、通信危機で10%と、サービス化シフトに注力する構えだ。「2015年度における残りの20%は削減対象となる」(齊藤氏)という。いわゆる事業のスリム化だが、これに伴って配置転換される人員の数は2000人規模になる見通しだ。

 こうして見ると、今回の日立のIT事業の構造改革は、かなりダイナミックな取り組みだ。なぜ、同社はこうした改革を急ぐのか。結果的には先に述べた収益確保が理由ではあるが、どうやらそのプロセスにおいて強い懸念があるようだ。それを垣間見させたのが、説明会の質疑応答で「クラウドサービスの競争力」を問われたときの齊藤氏の次のような回答である。

 「クラウドサービス市場はAmazon Web Services(AWS)が急伸長し、他のベンダーがAWSを追いかけている状況だが、これからはさまざまなクラウドサービスをインテグレートして個々の顧客企業に最適なソリューションを提供することが求められるようになる。それによって顧客から確固たる信頼を得て、多彩なインテグレーションによって顧客のイノベーションを支援していけるかどうかが競争力のカギとなる。顧客のイノベーションを支援するためには、クラウドのプラットフォームもさることながら、ビジネスに直結する“上流”のサービスを総合的に提供していけるかどうかが決め手になるのではないか。その競争に打ち勝つために、当社は今回、大がかりな事業構造改革を断行することにした」

 齊藤氏が言う“上流”のサービスとは、先に述べたシステムソリューション事業の高収益型サービス化に向けたシナリオを想定したものと推察される。同氏の回答はアグレッシブに感じるが、裏を返せば、強い危機感の表れである。日立が改革を急ぐ真の理由は、この危機感にあると筆者は見る。さらにいえば、こうした日立の取り組みは、日本のITベンダーに共通する課題を投げかけているといえそうだ。



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