大人も悩むLINEの「既読無視」――問題の本質とは?萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(2/3 ページ)

» 2015年06月19日 07時30分 公開
[萩原栄幸ITmedia]

既読無視はだれのせい?

 特に企業内のグループやママ友のグループは、そこから逃げ出すことができない。逃げるには、会社を辞めるとか、ママ友グループなら自分の子どもが被害に遭うリスクを抱える。筆者は、一部にある「嫌ならLINEをやめればいい」「被害妄想では?」という意見が極めて非現実的だと感じる。

 この問題に対する最適な回答は、それらの方々が置かれた状況によって異なるだろう。筆者は中学生の頃にいじめを受けて苦しんだ経験がある。そこで得た教訓は、ほとんどのケースで「いじめられる側には全く責任がない」という点だ。

自分が悪いのか?(写真はイメージです)

 そもそも、なぜ本人にその意図がなくても結果として「既読無視」にされてしまうのか。それは、実に簡単な理由だ。100人いれば100通りの人生があり、100通りの生活環境がある。勝手に送られてきたメッセージに、どうしても対応できない状況はいくらでもある。

それなのに送った側は、まず未読に「何秒かかるの!」「早く読んでよ!」「この私が送っているのに!」「読んでいないのは、お前だけだぞ!」と思う。しかし、既読には「なぜ返事しない!」「返事くらいすぐにできるだろ!」と考える。

 なぜ、他人に対して思いやりができないのだろうか。そういう人は、全てのケースにおいて既読後数分以内に返信できるだろうか。「絶対にできる」という人はうそつきか、極めて“恵まれた”環境にいるのだろう。「既読無視」の問題を引き起こすのは、自分の価値観を他人に押し付けて勝手にわめく人間だと考えられる。

 さらに恐ろしいのは、相手が既読だろうが未読だろうが、自分の思い通りに返信が来ないと「ムカツク」という人間が多数存在することだ。前述したように、「未読」なら「お前に非がある」と徹底して責める。「既読」なら「返信を待ってやる」と威丈高になる。会議中だろうと、親を介護している最中だろうと、泣きわめく子どもをあやしている最中だろうと、相手の状況などお構いなしに一方通行でメッセージを送る。送信者の価値観は、「〇分以内の返信」が全てなのだ。

 また、若い世代では「既読無視は氏ね」「ムカつく」という表現が多く見られる。若さゆえのおごり、未熟さと決めつけるのは簡単だが、なぜそういう思考になるのかを大人を含めて皆で考えなければならない。いろんな背景が予想されるが、本質的に考えると、そう表現してしまう人は「人と接する」という基本的な行動が未熟なのではないかと思う。

 「人と接する」という行動には、以下のような考え方が含まれる。

  • 自分が嫌だと思うことを他人に強制するのは悪いこと
  • 自分が世界の中心のように振る舞うのは悪いこと
  • 自分と他人は仲良しでも全く違うということ
  • 他人を理解して行動すること

 いずれも極めて常識的な考えだが、若い世代に限らず、中年ですらできない人があまりに多い。もし親がそうでも、子どもに「人と接する」機会(学校や遊び仲間、他の大人)が十分あれば、そうならないだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ