上限3万円の規制は10月1日に撤廃され、証憑をデジタル化したらすぐ、金額にかかわらず紙の原本を廃棄できるようになる。デジタル化したデータに対する電子証明書の付与も、10月1日から認定業者の仕組みを組み込む必要がなくなり、データ化した人が特定できるIDとパスワードでの代用が可能になる。
規制の緩和で、e文書法に準拠したデジタル化の仕組み作りや紙の原本を保存するための手間、保管にかかるコストが大幅に軽減されるため、今後はe文書法に対応する企業が増えると予想されている。
e文書法のターニングポイントともいえる2015年秋の改正だが、実は大きな課題が残されている。それは、「原稿台付きが必須」というスキャナの規制が緩和されていない点だ。これではスマートフォンやタブレットのカメラを使ったデジタル化が許されず、真の効率化にはつながらないというのが三村氏の見方だ。
コンカーは、スマートフォンのカメラで撮影した領収書が正式な証憑として認められている米国で、“領収書をもらったその場で撮ってすぐ、紙の原本を廃棄できる”経費精算の機能を提供しており、これが大幅な現場の時短につながっていると話す。オフィスに戻っていちいちスキャナを立ち上げることなく、すきま時間を使って精算を済ませることができるからだ。
スマートデバイスの利用が解禁され、領収書の電子化が徹底されると、原本の保管コストや倉庫への移送コストが必要なくなり、領収書の突き合わせにかかる人件費も削減できるなど、企業にもメリットをもたらすと三村氏。同社の試算では、1人の社員が月に30分間、領収書の張り付け作業を行うと仮定した場合、その作業をなくすことで日本全体で約6000億円/年のコスト削減が見込めるという。
コンカーは、スマートデバイスの解禁がもたらす経済効果について財務省や自由民主党に陳情を行っており、良好な反応が得られているという。すでに解禁を見込んだ製品開発も進めており、スマートデバイスのカメラで領収書を撮ったらすぐ、金額や店名をOCRで自動的にテキスト化する機能を準備中だ。
コンカーとスマートデバイス解禁に賛同する企業や団体は、2016年の改正を目指して陳情を続けるとしており、ビジネスパーソンが、“領収書貼り付け“という苦行から解放される日は、そう遠くないかもしれない。
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