じかんのほうそくがみだれる!? プロジェクト管理はSFのセカイ?女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(2/3 ページ)

» 2015年06月26日 07時00分 公開
[鐙貴絵ITmedia]
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 ある年の私は、夏休みの後半は絶対遊びまくろうと「遊びまわるための計画」を立てた。それは、夏休みの前半にすべての宿題を済ませるというもの。算数や国語のドリルも読書や感想文を書くことも、絵日記や自由研究まで7月中に終わるように、つまり10日間ですべて終わらせる計画を立てたのだ。

 毎日学校で1日中勉強しているのだから、「夏休みの前半に頑張ればそれくらい終わるだろう」という算段だった。これをちゃんとやり遂げれば、「そのあと1カ月は遊べる」などと高をくくっていたのだ。

 当然、その計画は無残な結果になる。そもそも、10日ですべての宿題が終わるはずがない。計画の中に「宿題の量」とか「宿題の難易度」がまったく反映されていない、絵に描いた餅のような計画なのだからうまくいくはずがない。8月の最終の週には、みごとにサ○エさん家のカツ○くんやちびまる○ちゃんが毎年陥っているのと同じ状況になるのだが、計画を立てているときにはそんなこと想像もしていない。

 さらに、この計画には落とし穴があった。それは、子供のころのわたしの性格だ。夜の20時からお風呂に30分と計画にあると、絶対そこでお風呂に30分間入っていなければいけないと思い込む。まさに「計画通り」でなければ気が済まない。楽しい番組をテレビで放映していようが、家族の都合があろうが、体調が悪かろうが、お祭りがあろうが、1日をこの計画通りに進めることこそが大切であると目的を勘違いしてしまっていたのだ。だから、朝から寝坊しようものなら、計画通りでないことそのものにダメ出しをしては一人落ち込んでいた。

 そもそも無謀な計画な上に、計画通りにいかないと落ち込む私の性格も相まって、夏休みは毎年落ち込むのがお決まりになっていた。思春期を迎えた頃の私は、反動で大の「計画嫌い」になった。計画通りにいかないのなら、最初から計画なんてしないほうがいい。

 その結果、「落ち込むのが嫌で計画しない」――という本末転倒な性格になってしまったのだ。とはいえ、好きなことにはめっぽうのめり込むし、勉強や作業そのものが嫌いなわけではなかったので、計画をたてなくてもそれなりにそれなりのことはできていた(きっときちんと計画を立ててやっていればもっと大物になっていたに違いない……ということにしておこう)。

 が、今回ばかりは計画倒れなんて許されない。規模が規模なだけに計画を立てないわけにいかないし、無茶な計画を立てちゃいけないし、計画に遅れが出たら、改善することもちゃんと頭に入れておかないといけないし。そうそう、計画を立てるのはなぜかという「計画を立てる目的」をちゃんと頭に入れておかないとね。こういう過去の教訓? をちゃんと参考にできる大人はえらいよね。

 PMBOKにもちゃんと「過去の教訓を大切にせよ」的なことが書いてあるしね。「これは昔の失敗を取り戻すチャンスなのよ!」と無理やり気持ちを奮い立たせた。よくよく考えれば、私の小学校時代の話と今回のプロジェクトは何の関係もないのだが、そこはノリで突き進むのが私なのだ。

 さて、「プロジェクト・タイム・マネジメント」である。なになに……

 いつも通り、計画プロセスの中にスケジュール・マネジメント計画書がある。どのようにスケジュールを立てるのか事前に決めておこうということだ。うんうん。これは今までと同じね。計画のための計画をたてる、と。

 ん? これは?

 私の目に留まったのは、その横のページに書いてあった図である。タイトルには「PDMの例」とある。PDM? あぁ、また出てきた謎の3文字英語が……。パラダイス・ドリーム・ミュージックとか? あぁ、何を考えているんだろう、わたし。せめてPDFとかBGMとかでボケられんか? いかん、ボケのことを考えている場合ではない。

 まずは基本中の基本、参考書を“ちゃんと”読むことが大切だよね。えーと、PDMとは、Precedence Diagraming Methodの頭字語で、プレシデンス・ダイアグラム法というのか。横文字が苦手な私だけれどちゃんと覚えておこう。間違っても「プレジデンス」を「プレジデント」とか「プレゼント」とか言わないようにしなくっちゃ(やっちゃいそうで怖いよぉ)。

 パッと見た感じでは、何を意味しているのかよく分からない数字が並んでいる。しかも、上下に1つずつ。参考書には、アクティビティ(これ以上分けられない一番小さな作業単位)順序設定プロセスの中で使う「代表的なスケジュールネットワーク図である」と解説がある。

Photo これがプレシデンス・ダイアグラム法を使ったスケジュールのネットワーク図。ぱっと見では何を意味しているのかよく分からない……

 さらに「スケジュール・モデルを構築するための技法の1つである」とも書いてあった。ということは、これを使えばスケジュール計画が立てられるってことかな。それにしても、それぞれの四角形の中に書いてある数字は何なのだろう。各アクティビティにかかる時間、開始時間、終了時間だってのはなんとなくわかるのだけど、上の数字と下の数字は何が違うのかしら?

 参考書の解説を探すと……あった、あった。左上は「最早開始日」で左下は「最遅開始日」、右上は「最早終了日」で右下は「最遅終了日」らしい。なるほど。最早開始日って最も早くアクティビティを開始できる日(または時間)のことで、前から順に計算するものなのね。で、最遅開始日ってのはこの日(または時間)までに始めておかないと期日までに終われないってことで、終了日からさかのぼって計算したものなのね。

 つまりは、最遅開始日を超えてもまだそのアクティビティを始めていないと、スケジュール的にまずいってことよね。最早開始日に始めるのが望ましい、遅くとも最遅開始日には始めておかないと、ってことか。

 すると、その前に書いてあった「終了−開始(FS)関係」など4通りの順序関係の理解も大切になることが、お気楽な私にも理解できた。もう一度、この4つの関係を再読しておこうかな。

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