プロマネは“コストのギャップを埋める”錬金術師?女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(3/3 ページ)

» 2015年07月10日 07時00分 公開
[鐙貴絵ITmedia]
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 確かに与えられた10万円で適当な旅行をすると、「ホテルよりグルメにお金かけるべきだった」とか、「お土産代にお金かけすぎた」とか、後悔の嵐になりそう。それに対して、まずやりたいことを明確にして、それにかかる金額を算出し、実際の予算とのギャップをきちんと考えることで、より満足度の高い旅行ができそうだもの。

 そう考えると、「在宅ヘルプデスク業務開設プロジェクト」に本来かかるはずのコストを見積もることがいかに大事かが分かってくる。早速、どんなツールや見積方法があるのか確認しておこう。

 コスト見積のツールや技法には、「類推見積り」「パラメトリック見積り」「ボトムアップ見積」「三点見積り」がある。

 ボトムアップ見積りはどこかで聞いたことがある。それぞれの要素のコストを見積もってその合計金額がコストの総額となるものだ。たしか、個々のワーク・パッケージやアクティビティのコストを詳細なレベルで見積もるのでかなり正確だけれど、詳細なレベルまで内容が分かってないと見積もれないし、複雑だと見積りが面倒な方法だと記憶している。私にできるのかしら? 今回のプロジェクトには適切なのかな? そもそも、今回のプロジェクトでは、どの見積方法が一番適切なんだろう?

 ひとまず、ほかの方法も確認しておこう。類推見積りは、同じようなプロジェクトで使用したスコープ、コスト、予算、期間などを尺度として同一のパラメーターや測定値を利用するやり方だ。過去に「在宅ヘルプデスク業務開設プロジェクト」によく似たものや、ワーク・パッケージ単位で同じようなものがあれば私にもできそうだし、みんなに手伝ってもらえればそれを探すのも、少しはラクになりそう。しかも、経験的なものが少ない私には、それが一番楽なやり方のような気がする。

 パラメトリック見積りは、関連する過去のデータとその他の変数との統計的関係を用いてプロジェクト作業のコスト見積を算出する方法らしい。「統計的関係」という言葉を聞いただけで、数学に弱い私は「無理そう」と思ってしまう……。

 三点見積りは、最可能値、楽観値、悲観値の3つの値を利用する方法だ。これも、どこかで習ったなぁ。どこだっけ……。参考書の説明を読むと、最頻値というのは、「プロジェクトを進めるときに最も現実的な所要期間またはコストのこと」とある。つまり、計画通りに進んだときのコストのことね。楽観値というのは、最もうまくいった場合の所要期間またはコストのことで、悲観値とは、トラブルや遅延が多発し、最悪のシナリオでプロジェクトが進む場合の所要期間またはコストの見積り値のことだ。

 見積方法は分かったけど、どれを使ったらいいのかな。ものによって見積方法を変えるのかな? あ、そうか。こういう時に「専門家の判断」を利用するのよね。つまりは、Aさんたちを巻き込んでアドバイスを仰ぐってことね。

 にわかプロジェクト・マネジャーの私には分からないことだらけ。分からないことを1人で悶々と考えていても答えは出ない。こういう時こそ「聞く」姿勢が大事なのよ! とにやにやしていると、ちょうど後輩M君がやってきた。ラッキー!

M君 せんぱーい。試験申し込みました?

わたし まだだけど?

M君 試験代、結構痛いですもんねー。いつ申し込むんですか?

わたし 試験代が痛い?って、試験代が高いってこと?

M君 あれ、先輩。試験のこと、まだ何も調べてないんですか?

わたし あ……。えーと、プロジェクトの準備が忙しくて……。

 って、後輩相手に何言い訳しているんだか。国家試験が5100円なんだから、そんなもんじゃないかと思っていたんだけれど、それは若者には痛い金額なのかな?(私が若者じゃないみたいだ)。ベンダー試験は高いって聞いたことある気がするけれどいくらなんだろう。そういえば、新入社員がみな取得してくるMOS(Microsoft Office Spesialist)も1万円って言っていたような気がする。ここは、一応聞いておいたほうがいいかな。

わたし えーと、ちなみに、いくらなの?試験代。

M君 PMIの会員でない場合は555ドルです

わたし ど……ドル?

M君 なにせ、国際的な資格ですからね。ドル建てですよ。今朝の円はいくらだったか確認していませんけれど、単純に1ドル100円とみても5万5千円です。

わたし ご……5万?!

M君 いえ、5万5千円です。今、円、もうちょっと安いですよね。

 聞いてないんだけど! いったい誰が出すっていうの、5万円以上の受験代を……。私のお財布的に、コスト超過じゃない。予算からみて約10倍のオーバーだし、このギャップは埋まらない……。

M君 ほかにもいろいろ大変なことがありますよ。試験を受ける時に提出する書類は英語ですよ。

わたし 英語で作成するの? 何を? 受験申込書とか?

 英語で出さなきゃいけないの? 聞いてないことだらけじゃない……。

M君 まぁ、その受験申込書みたいなものです。それに35時間の学習時間も必要ですし、あ、先輩はe-Learningで確保できるんですよね。これはクリアですね。

 35時間の学習時間? そんな条件があったのね。そうか、Aさんがe-Learningを勧めてきたのは、この学習時間を稼ぐためだったのか。

 う゛ーー。先に試験のこと調べておかないと……。というか、私自身のコスト・マネジメントしておかないとやばいかも。試験のための出費は確かに痛すぎる。これじゃ、落ちるわけにもいかないじゃない!(落ちる気満々だったのか?)

 私の試験代、プロジェクトの経費から落ちないかしら。無理か? それにしてもAさん、受験料が高いってことぐらい、教えてくださいよぉ。でないと、本来かかる予算を算出することもできないじゃない。プロジェクトのコストをマネジメントするよりも、私の財布の中身をマネジメントするのが先のようだ。

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