今後のHCM/人事支援サービスの“肝”はどこにあるかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年07月13日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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“肝”はタレントマネジメントの活用にあり

photo 会見に臨む日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括の下垣典弘専務執行役員(右)と同HCMクラウド統括本部長の首藤聡一郎執行役員

 富士通と日本オラクルによるそれぞれの発表から見て取れるのは、今後の人事支援サービスにおけるキーワードは企業の競争力強化につながる人材管理、すなわち世界共通用語でいえば「タレントマネジメント」である。

 タレントマネジメントとは、個々の社員が持つ能力(タレント)やスキルなどの情報を、企業がデータベース化して一元管理し、戦略的な人材活用を図る施策のことである。日本でも3年ほど前から注目されるようになってきたが、その背景には、雇用形態の多様化やグローバルへの進出が加速している国内企業の人材活用に対する問題意識の高まりがある。さらに、これまで欧米企業に比べて後れをとってきたダイバーシティ(多様性)への対応にも関心が高まっていることがある。

 日本オラクルでクラウド・アプリケーション事業を統括する下垣典弘専務執行役員は、日本企業におけるタレントマネジメントシステムの活用について「日本企業ではどこも人事管理システムを利用しているが、人材情報を企業の競争力強化に生かそうと取り組んでいるところはまだまだ少ない。そのために人材をどう発掘し育成するのか。とりわけ、クローバルに進出する日本企業が増えつつある中で、人材活用に向けたソリューションのニーズは急速に高まってくる」との手応えを感じているという。

 ちなみに、オラクルのHCM(Human Capital Management)ソリューションは、同社のERP製品群と連携する形で早くから人事給与に加えてタレントマネジメント機能を備えてきた。さらに2012年にはタレントマネジメントのSaaSベンダーである米Taleoを買収。今回機能を拡張したOracle HCM Cloudはこうしたプロセスを経て進化してきた、まさにタレントマネジメント機能に強みを持つ人事支援サービスといえる。

 一方、富士通のグローバルHCMサービスも、euHRekaとSuccessFactorsのデータをリアルタイムで連携させることにより、人事給与コストの状況を見ながら人材の能力や育成状況、配置を効率的に管理でき、戦略的な人材活用が可能となることを特長の1つに挙げている。こうした富士通および日本オラクルの動きから、今後の人事支援サービスでは、ベンダーにとってもユーザー企業にとってもまさしくタレントマネジメントをいかに活用できるかが“肝”になると言っていい。

 加えてもう1つ今回の発表で注目しておきたいのは、富士通のグローバルHCMサービスにおけるビジネスモデルである。自社製にこだわらず、ベストプラクティスとなり得る外部のSaaSを組み合わせてBPOサービスとして提供するというビジネスモデルは、ユーザー企業から信頼されているシステムインテグレータ(SIer)ならではの成せる業ともいえる。クラウド時代のSIerのビジネスモデルとして果たして定着するか。そのためにも成功事例を積み上げていくことが肝要となりそうだ。



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