夏休みに注意するセキュリティの脅威、傾向と対策は(前編)萩原栄幸の情報セキュリティ相談室(3/3 ページ)

» 2015年07月17日 08時00分 公開
[萩原栄幸ITmedia]
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友だちに貸してはいけないモノ

 PC、スマホ、タブレット、デジカメ、USBメモリ、SDカードなど安易に貸してしまうのは危険だ。これも本連載で何度か警告しているが、デジタル機器では「データを消す」ということに注意しないといけない。

 なぜなら、「ファイルを消去する」「ゴミ箱を空にする」「フォーマットする」「初期化する」といった文言の操作をしても、実際に“データの本体”が消えるケースはほとんどない。そのデータがビット単位で壊されて、ようやく「消えた」といえる。つまり消去したつもりでも、本体は消えていないので、データは復元できてしまう。

 「このツールでHDDもSSDも完全にデータを消去できます」という嘘も時々見受けられる。実際にはそれができるソフトはごく一部しかない。詳細は割愛するが例えば、論理的にSSDのデータを完全に消去することはとても難しく、特許を持った専用ソフト以外は不可能である。

 筆者が実際に相談で対応したケースには、若い女性たちからデジカメやSDカードなどを借り、こっそりとデータを復元して画像などを根こそぎ収集している人間がいた。

スマホでPC並みの防御は不可能

 正確には、世界で数多くの端末が販売されているAndroidのことになる。その構造上、ウイルス対策ソフトはあまり役に立たず、「ないよりはマシ」という程度だ。PC並みの防御効果を期待して購入しても、「あの有料アプリがタダ」といった具合で怪しいアングラサイトもあるが、そこを訪れただけでまず感染させられてしまう。市販のウイルス対策アプリでは、ほとんど効果がない。しかも、ユーザー本人はそのことに気が付かない。

盗撮行為が増える

 最近捕まった盗撮者は、シャッター音を消してすぐメールで送信するアプリを使っていたという。「これならバレない」と思った人は、人生がひっくり返る可能性が大きい。警察もそういうアプリや設定をすぐに突きとめる。好奇心や出来心で絶対にやってはいけない。犯罪行為だ。多くの加害者は「捕まらない」という根拠のない自信で実行し、捕まった瞬間、「人生が終わった」と真っ白になるという。費用対効果という面で絶対に割の合う行為ではないし、ずっと「盗撮人間」として言われ続けてしまう。

PCがウイルスだらけ?

 偉そうに「オレのPCにウイルス対策ソフトはない。ネットをしても全く問題ない。みんな買うなんて……」と言う人がよくいる。そういう人は現実を知らないのだろう。

 10年近く前になるが、国内のセキュリティ機関やインターネットプロバイダーが実際のインターネットで様々な実験をした。その中で、ウイルス対策ソフトをいれていないPCをネットにつなげると、どうなるのかを調べている。その結果、平均すると約4分でウイルスに感染する。今ではもっと短い時間で感染するそうだ。

 もしウイルス対策ソフトを使わないで何カ月もアダルトサイトを繰り返し閲覧したら、どうなるのか。当然ながら、“まっ黒”に汚染されている。ここからウイルス対策ソフトをインストールしても、さほど効果はないだろう。

 ウイルスの中には、感染していることをうまく隠してしまうタイプがある。実は所有者が気付かずに汚染され、スパムメールをばらまいたり、Webサイトに攻撃をしたりする加害者にされてしまっているかもしれない。そんなPCは早く廃棄すべきかもしれない。筆者の知る若者は、夏休みに先輩から「ウイルス対策ソフトは費用もかかるし、遅くなるのでやめた方がいいよ」と言われて、痛い目にあった。

 次回も夏休みに注意していただきたい犯罪や危険性について解説しよう。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、「先端技術・情報犯罪とセキュリティ研究会」主査。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格。2008年6月まで三菱東京UFJ銀行に勤務、実験室「テクノ巣」の責任者を務める。

組織内部犯罪やネット犯罪、コンプライアンス、情報セキュリティ、クラウド、スマホ、BYODなどをテーマに講演、執筆、コンサルティングと幅広く活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。

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