しかし、一見問題がないように思えるコンテナ貨物船にも弱点があります。それは、直方体ではない異なる形のコンテナは混在できないことです。実際のコンテナ船に搭載されるコンテナは一般的に標準化された形状となっています。もし球状など違う形のコンテナが混在していたら、船やコンテナ同士に隙間ができ、積載もできなくなるので効率が下がります。甲板で転がって事故になる恐れもあります。
コンピュータにおけるコンテナも同じで、直方体のコンテナがLinuxだとすれば、すべてLinuxのコンテナを船(ホストOS)に搭載しなければなりません。違う形のWindowsコンテナやMacOSのコンテナを同時に乗せて運搬することはできません。
このようなコンテナの技術を駆使したSolarisゾーン、HP-UX Containers、Linuxで稼働する「Linuxコンテナ」は枯れた技術として商用製品化されており、すでに多く利用されています。
Linuxで稼働するコンテナ型の製品として「Virtuozzo(バーチュオッゾ)」が有名で、欧米のWebサービスプロバイダ(ホスティング)で利用されています。また、Virtuozzoのオープンソース版として知られる「OpenVZ(オープン・ブイジー)」は、稼働させたままのコンテナを別のサーバに移動させる「ライブマイグレーション」の機能も備えるなど、コンテナに携わる技術者コミュニティの成果は目を見張るものがあります。
2015年現在、Dockerが世界的に大流行しています。その基本となるコンテナの技術はすでに枯れた商用製品として取り込まれており、市場に多く出ています。
では、これらのVirtuozzoやOpenVZなどのいわゆる「Linuxコンテナ型のソフトウェア」とDockerは、何が違うのでしょう。
次回は、もっとDockerの正体に迫っていきます。お楽しみに。
(第5回はこちら)
日本ヒューレット・パッカード株式会社 オープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリスト。兵庫県伊丹市出身。1996年頃からオープンソースに携わる。2000年よりUNIXサーバーのSE及びスーパーコンピューターの並列計算プログラミング講師、SIを経験。2006年、米国HPからLinux技術の伝道師として「OpenSource and Linux Ambassador Hall of Fame」を2年連続受賞。プリセールスMVPを4度受賞。現在は日本HPにて、Linux、FreeBSD、Hadoopなどのサーバー基盤のプリセールスSE、文書執筆を担当。Red Hat Certified Virtualization Administrator, Novell Certified Linux Professional, Red Hat Certified System Administrator in Red Hat OpenStack, Cloudera Certified Administrator for Apache Hadoopなどの技術者認定資格を保有。著書に「CentOS 7実践ガイド」「Ubuntu Server実践入門」などがある。趣味はレーシングカートとビリヤード
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