三味線の演奏を支援するAndroidアプリ「Aibiki」を開発したのは、東京大学大学院情報理工学系研究科 修士2年の濱中敬人氏だ。楽譜や伝承、調弦など独特な手法が用いられる三味線を習得しやすくするアプリで、自動譜めくりや自動伴奏、タブレット上に表示された弦を押さえると音が鳴るシミュレータ機能などを備える。
さまざまな人にアプリを使って三味線を学んでもらったところ、ほとんどの人が30分で「さくらさくら」を弾けるようになったそうだ。同アプリは英語にも対応しており、三味線レンタル企業「SEION」と連携し、同社のWebサイトからアプリのダウンロードページへのリンクが貼られている。
Aibikiは2015年2月にGoogle Play上で公開しており、無料でダウンロードできる。
未踏事業は2000年から約15年間続いており、Rubyの開発者であるまつもとゆきひろ氏をはじめ、Gunosy代表取締役CEOの福島良典氏、スマートニュース代表取締役会長共同CEOの鈴木健氏など、さまざまな業界で活躍するエンジニアや起業家を輩出している。2014年までに採択されたクリエイター1627人のうち、約1割が起業に至っているという。
今後はクリエイターたちの“卒業後”の支援にも注力する。2014年に「Mitou Foundation(一般社団法人未踏)」を設立し、過去の卒業生を含めた人材のネットワーキング、経済的な支援などを行う計画だ。
2014年度の未踏事業の修了式では、同事業の主催者であるIPA理事長の藤江一正氏が「未踏を15年続けてきて、優秀なクリエイターが集まる入口はできたと考えている。今後は卒業生の素晴らしさを伝え、支援するような出口に注力していく。正直、経済産業省やIPAだけの力では、クリエイターがやる気になるようなスキームができていなかった。未踏財団はお金を含めたさまざまな相談ができる仕組み。君たちはこれを使える最初のクリエイターだ」とエールを送った。
経済産業省としても未踏事業の強化を目指していくという。「アメリカなどに比べ、日本は大企業が強いが、ベンチャーが弱いという課題から未踏事業は始まった。IoTによって産業構造が大きく変化するなかで、高度な技術を持つIT人材の需要はますます高まっている。その中で“未踏”はブランドになる必要があり、経済産業省の目玉事業になるようにしていきたい」(商務情報政策局 情報処理振興課 課長 野口聡氏)
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