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» 2015年08月19日 10時00分 UPDATE

Computer Weekly:冷却コスト激減、米Yahoo!が目指すグリーンエネルギーデータセンター

米Yahoo!は環境保護への配慮を重視し、さまざまな取り組みを行っている。その取り組みを同社担当者に聞いた。

[Caroline Donnelly,Computer Weekly]
Computer Weekly

 データセンター業界が環境保護に配慮していることの証明を求める世間の目は、最近ますます厳しくなっている。各事業者は、どれほどエネルギー効率を追求しているか、どの程度化石燃料へ依存しているのかを公表するべきだというプレッシャーを受けているのが現状だ。

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 Webサービス事業の最大手である米Yahoo!は、温室効果ガス(CO2)排出量を削減する取り組みを、2007年からデータセンター部門が率先して進めている。こう語るのは、同社のエネルギーおよび持続可能性戦略担当グローバルディレクター、クリスティーナ・ペイジ氏だ。

 「従業員の通勤、出張時の航空機利用、オフィスビルでの活動、データセンターの運営など、当社の企業活動で発生するカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)を全体的に見直した。その結果、データセンターの影響が最大であると分かったので、この領域で対策を講じることに注力してきた」と同氏は説明する。

 かつて同社は、他の事業者から場所を借りてデータセンターを運営していた。だが、8年前から、データセンターの建設から運営までを全て自社事業として取り組むようになった。同社事業の柱であるデータセンターの設置場所と設計に対して、同社自身が制御する領域を増やすためだ。

 「昔の常識では、データセンターの建物は気密性を高くして継ぎ目などは密封すること、そして(大きな空調設備で)送風を集中管理して室内の空気を冷やし、温度と湿度を常に一定に保たなければならないといわれていた」とペイジ氏は振り返る。

 「このシナリオに従うと、サーバ機器を冷却するためには、サーバの稼働に消費するのとほぼ同じ量のエネルギーが必要だった。われわれは、データセンターを所有して運営するプロセスを経験することによって、効率よく窓を開けて外気を取り入れると、(24時間空調を使って室温を管理するのと)同じ効果が得られると気づいた」と同氏は付け加える。

とにかく大切なのはデータセンターの立地

 近年の同社は常に、温室効果ガス排出量を低く抑えた方法で電力が得られる場所を探している。例えば2010年には、米ニューヨーク州西部のナイアガラ郡にデータセンターを開設した。

 この場所にデータセンターを建設したのは、現地の水力発電の電力を直接利用することができるからだ。さらに、気候が比較的涼しいので、冷房の費用も最小限に抑えることができる。

 ニューヨーク州西部のこのデータセンターはまた、機器の冷却に外気を利用するYahoo Computer Coop(YCC)設計アーキテクチャを採用した初めての実例でもある。

 「この仕様はローテクで、建設コストを安価に抑えられる。大掛かりな空調設備を設置する必要はないからだ。しかも設置する機械そのものが少ないので、障害が発生する確率も下がり、データセンター稼働の信頼性が高まる」とペイジ氏は語る。

 YCC仕様に基づいて作られたこの施設は、細長い「鶏のケージ」状の形をしている。ペイジ氏によると、この設計は外気を取り入れて室内を循環させるためのもので、機器の冷却用に消費するエネルギーは、データセンター全体で消費するエネルギー量のわずか1%に抑えられるという。

 「年間を通して高温多湿になる日がほとんどないこの場所を選んでデータセンターを建設したのは正解だった。設計が期待通りの効果を挙げている。最初のデータセンターは手堅く成果が得られる場所を選んだが、現在の結論としては、同じ技法でデータセンターを建設できる場所は他にもある。もっと高温多湿な場所でも、われわれの技術で効果を出せる」と同氏は主張する。

 このニューヨーク州西部のデータセンターは、電力使用効率(PUE)が1.08だという。YCC仕様を採用したこの施設を建設したことにより、Yahoo!は2010年に米国エネルギー省から表彰され、990万ドルの助成金を受けた。

 こうした理由から、業界内の他社でもYCCに似た仕様が採用され始めているとペイジ氏は話す。Yahoo!のような業界大手企業が率先して環境保護に取り組む姿勢を見せることで、競合他社も触発されて後押しされていると感じているという。

 それでも、克服するべき課題はまだまだあるとペイジ氏は語る。特に、「鶏のケージ」型の建物が寒冷地ほどの効果を挙げない温暖な土地でも、データセンターの需要はあるからだ。

 そこでYahoo!が現在実験中なのが、油に浸して冷却する技法だ。データセンターのサーバ機器を全て誘電性のある冷却液のタンクの中に沈めて、ハードウェアが放散する熱を取り込み、その熱をエネルギーとして抽出する。

 「YCCは万能のソリューションではない。世界中のさまざまな場所でも、(YCCと)同様の効果が得られるように、われわれは今なおイノベーションの追求を続けている。(データセンター建設の)採算と省エネ効果の観点から、それぞれの立地に適した解決策を見つけるには、もっと知恵を絞らなければならない。われわれはこの問題に引き続き向き合っていく」とペイジ氏は語る。

再生可能エネルギーの利用を約束

 Yahoo!はさらに、同社へのエネルギー供給元を確保するための多数の取り組みを相次いで開始している。

 その一例として、再生可能エネルギー開発を手掛ける新興企業、米OwnEnergyから電力を購入する契約を結んだことが挙げられる。この契約を結んだことで、カンザス州にウインドファーム(集合型風力発電所)が建設されて、このウインドファームが将来的には年間発電能力10万Mワット時規模になると期待されている。

 ウインドファームで作られた電力は、アメリカ南西部で電力を供給している組織(複数の電力会社が加盟している)、Southwest Power Pool Networkへ送られる。この組織は、余剰電力を効率的に集積するリポジトリとして機能しており、他の地域で電力不足が発生したときに、この余剰電力を利用できる仕組みになっている。

 Yahoo!はこのアプローチで、データセンターで同社が大量の電力を消費することの埋め合わせとして、再生可能エネルギーを自社以外からも利用できる仕組みを作り、社会に貢献しているとペイジ氏は主張する。

 「この電力購入の契約内容には、かなり柔軟性を持たせてある。従って、私個人が電力を購入する顧客となって再生可能エネルギーの開発を促すこともできるし、私が急激に資産を増やした場合のことも考慮してある」とペイジ氏は説明する。

 「私は近いうちに大成功するつもりなので、仮に私が突然資産家になったら、私自身が再生可能エネルギーの開発を促すと同時に、電力の購入を資産運用のリスクヘッジとすることもできる。その気になれば私が個人でデータセンターも所有して、購入した電力を使うこともできる」と同氏は付け加える。

 ペイジ氏は、クラウドプロバイダーのコミュニティーの中で、Yahoo!に倣って再生可能エネルギーを利用する財務モデルを採用する企業がもっと現れてほしいと強く期待している。データセンターは(貴重な)電力を大量に消費するものだから、その埋め合わせとして社会にいくらかでも貢献する方法を考えるべきだというのが同氏の持論だ。

 「当社と同様に、クラウドプロバイダーが再生可能エネルギーの利用に取り組むところをぜひとも見たい。自社事業の電力をどのようにして調達したいかを広く公開するのは、他の社会インフラを運営する企業に対して、強力なメッセージを発信することになると思う。クラウド企業にとって、これは非常にわくわくする、将来性のある戦略で、注目する価値が大いにある。特に今は、業界全体で再生可能エネルギーの利用率を押し上げるための方法を模索している時期なのだから。それに、お気付きかもしれないが、この戦略がその企業の事業計画につながる可能性もある」

 グリーンピースなどの環境保護団体は、人々がある事実を忘れないように、定期的に呼びかけを行っている。その事実とは、現在ユーザーが依存しているクラウドサービスを運営しているデータセンターの多くは、かつて非再生可能エネルギーを利用していたということだ。

 そこで、プロバイダーが自社施設で利用する再生可能エネルギー量を増やす計画を確実に進めたいと思うのなら、段階を踏んで少しずつ実現するべきだとペイジ氏は注意を促している。再生可能エネルギーに対しては、顧客の意識も急激に高まってきているからだ。

 「5年前なら、一般の人々がこのような情報を得るのは困難だった。今はグリーンピースなどの各団体が、 クラウド事業のサプライチェーンについて人々を啓発し、透明性の高い情報を提供している。クラウドプロバイダーはこれから、施策を進める前に必ず『顧客はこの施策に注意を向けているだろうか?』と自問するべきだ。プロバイダーの動向に注目する顧客の数は確実に増えているのだから」と、ペイジ氏は締めくくった。

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