え、あの人にこんなスキルが!? プロマネ修行でお宝発見!女子ヘルプデスクのプロマネ修行奮戦記(3/3 ページ)

» 2015年08月21日 13時00分 公開
[鐙貴絵ITmedia]
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わたし Aさん、「在宅ヘルプデスク業務開設プロジェクト」のRACIチャートを作っているんですが、よく分からなくて相談にきました。

Aさん ほぉ、RACIチャートね。で、どこが分からないのかな?

わたし えっと、説明責任者(Accountable)や実行責任者(Responsible)は設定したんですが、相談対応(Consult)と情報提供(Inform)を誰にしたらいいかが分からなくて。

Aさん ん? 説明責任者は誰にしたの?

わたし わたしです。

Aさん あー、そこからちょっと違うね。

わたし え?

Aさん この「在宅ヘルプデスク業務開設プロジェクト」において、クライアントである経営者層に対してさまざまな説明をするのは、総責任者でもあり、スポンサーでもある僕の仕事だね。

わたし あ、そうか。じゃ、説明責任者はAさんですね。

Aさん そうだね。で、実行責任者が……

わたし わたし……ですね。

Aさん そう。で、相談対応というのは、困った時の相談先なんだけれど、これはプロジェクト・マネジャー経験者が良いと思うよ。

わたし なるほど……。でも、誰が適任か分かりません。

Photo イラスト:本橋ゆうこ

Aさん そうだねぇ。じゃ、開発課のF課長にお願いしてみてはどうだろう。「在宅ヘルプデスク業務」にかかわるシステムの開発担当責任者だし、今のヘルプデスクを最初に開設したのも彼だしね。

わたし えー、そうなんですか? あの、おじいさんが……

Aさん おいおい、おじいさんはないだろう。彼はああ見えても、まだ50代前半なんだぞ。

 「ああ見えても」と言っていること自体、アウトなような気がするけど……

わたし ところで、情報提供は情報をもらう先ですか? 渡す先ですか?

Aさん 情報提供というのは、情報提供先という意味だよ。つまり、情報を渡す相手、という意味だね。

わたし となると、私の元でこのプロジェクトを進めるメンバーみんなってことでしょうか。

Aさん 「みんな」ってことはないね。そもそもRAM、今回ではRACIチャートだね、これは、一般に階層的に作られる。最も上位のRACIチャートはプロジェクト全体を総括するための役割分担を示すし、1つ下位のRACIチャートはフェーズ単位に、さらに下位のRACIチャートはタスク単位、さらにタスクごとのワーク・パッケージ単位、ワーク・パッケージごとのアクティビティ単位、と細分化されていくんだ。もっとも、どこまで細分化すれば良いかはプロジェクト全体の規模によっても違うけどね。プロジェクト全体のRACIチャートの場合は、フェーズごとの実行責任者が情報提供先になるだろうね。

わたし なるほど……。これは、プロジェクト全体のRACIだから、フェーズごとの責任者が情報提供先に……ということは、情報提供先は複数人いるってことになるんですね。

Aさん そうだね。情報提供先は複数人になる場合があるね。

 その後もAさんがいろいろと教えてくれた。下位のRACIチャート、例えばアクティビティごとのRACIチャートまで私が作ると大変だから、それはアクティビティやそれをまとめたワーク・パッケージの責任者に作成を依頼する(権限を委譲する)のが良いのだそうだ。なるほど、役割分担と権限委譲の計画を立てることも、人的資源マネジメント計画の一環かもしれない。

 それぞれのアクティビティごとの、いちばんの責任者が説明責任者だ。これは、さらに上位の説明責任者から「どうしてこういう人材配置にしたのか説明してみぃ」って言われる立場の人のことだ。同時に、「これこれこういう理由で、この人をアサインしました」とか、「スタッフのスキル取得のためにはこういう方針で、こういうスキルをこういうやり方で取得させるつもりです」とかってきちんと説明する人のことを指す。説明する責任を負う以上は、方針ややり方を決定する役割も担う。そして、説明責任者が決めた方針に従って、アクティブティを着実に実施する責任を負う人が実行責任者だ。

 そして、この説明責任者を任命するために、そのアクティビティを成功させるにはどのようなスキルを持った人が必要であるかを人的資源マネジメント計画で明確にするのが、今の私の仕事というわけだ。なるほど。ものすごく納得。

 ん? ということは、そもそも「在宅ヘルプデスク業務開設プロジェクト」を成功させるためにプロジェクト・マネジャーに選ばれた私には、そのスキルがあったってことか? PMP資格を持ってなくても、Aさんから「デキるおんな」として認められているのかもしれないわね。

 そう思ってほくそ笑んでいると、Aさんから「なんだかうれしそうだね」って言われてしまった。どうやら、顔に出てしまったみたい。

 プロジェクト人的資源マネジメントには、必要なスキルを身に付けさせるための教育も含まれる。Aさんにしてみれば、私にPMBOKを学習させることもその一環なのだろう。やっぱり、Aさんから振られたPMP受験は、しっかりとAさんのワナだったわけだ。やるな、Aさん。キーボードオタクだけではない、「デキる上司」なのか?

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