第1回 そのデータは、50年後も読めますか?クラウド社会とデータ永久保存時代の歩き方(2/2 ページ)

» 2015年08月26日 08時00分 公開
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保存期間 メディア:メディアがデータを保存していること(媒体寿命) システム(ハードウェア):メディアからデータを読み出し、システムのメモリに格納できること システム(ソフトウェア):ハードウェアで読み出したデータを他のプログラムやユーザーが取り扱えること
〜3年 たいていの場合、正常に使用可能 データの保存で使用したハードウェアがあれば使用可能 対応ソフトウェアがあれば使用可能
〜10年 テープ・光ディスクならば読み出し可能 新製品はなくても、動作するものが残っている可能性はまだ高い。 上位互換システムで使用できる場合はある
〜30年 テープ・光ディスクならば読み出し可能という資料がある おそらく、残っていない。 おそらく、残っていない
〜100年 電子媒体では難しい 残っていない 残っていない
出典:(社)電子情報技術産業協会 テープストレージ専門委員会「コンピュータ用テープによるデジタルデータの長期保存」(http://home.jeita.or.jp/upload_file/20111221165535_MvQbSIymHi.pdf)より

データを長期保存する、たった3つの方法

photo 例えば、CD-Rへの保存方法はあと何年“持つ”でしょうか……

 前置きはここまでにし、先端ストレージ技術の話に移って行きましょう。

 もっと長い期間、大事なデータを読めるようにするにはどうすればよいのか。その方法の代表的な例が以下の3つです。

(1)ミュージアム手法

 メディアはそのまま保存。システムもそのまま保存。記録当時のまま保存・保守を続けるという方法です。これは実に高コストな手法のため、まさに博物館レベルのものでないと維持はできないですね。

(2)エミュレーション手法

 メディアはそのまま保存。システムなどは更新するが、古いメディアも読めるように作るという方法です。身近なものでは、CDメディアにおけるDVDドライブ(DVDもCDも読み書きできる)のようなイメージです。

 これもエミュレーション環境の維持、サポートの不安などがあり、どちらかというと気軽な方法ではありません。

(3)マイグレーション手法

 古いメディアから新しいメディアへ移動させ、システムも更新する方法です。身近なものでは、VHSビデオ→DVDやBlu-ray Discメディアへ移すイメージです。これが最も現実的と考えられます。どんなにメディアが長寿命でも、読む装置がなければ役に立ちません。今や半年サイクルで新しい製品が出てくるPC製品の世界において、記録メディア再生装置の寿命やサポート期間はあっという間にやってきます。

 そこでデータは定期的に、古いメディアから新しいメディアにコピーしていく必要が出てきます。ITの世界ではこれを「データ移行」または「データマイグレーション」と呼んでいます。実は、ほとんどのIT従事者はこれを嫌がります。貴重なデータを移動するのはとても神経のいる作業だからです。

 では、この「データマイグレーション」はどんな点に注意すればよいでしょう。

 次回は「この注意点」を解説します。

 (続く)


著者:井上陽治(いのうえ・ようじ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージテクノロジーエバンジェリスト。ストレージ技術の最先端を研究、開発を推進。IT業界でハード設計10年、HPでテープストレージスペシャリストを15年経験したのち、現在SDS(Software Defined Storage)スペシャリスト。次世代ストレージ基盤、特にSDSや大容量アーカイブの提案を行う。テープストレージ、LTFS 関連技術に精通し、JEITAのテープストレージ専門委員会副会長を務める。大容量データの長期保管が必要な放送 映像業界、学術研究分野の知識も豊富に有する。



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