先に答えを言ってしまうと、欧米のIT部門はそれほど犠牲を伴っていません。
理由は単純。彼らには「流用する」といった考え方はほとんどないのです。
どういうことかというと、日本でごくあたり前に行われている既存の機器やツールを後継システムや別なシステムでも有効利用するといったことは、彼らにとってはイレギュラーなことです。この考え方はITシステムのレイヤーが下に行けば行くほど強い傾向があり、インフラやプラットフォームが最も顕著になります。
1つ例を挙げてみましょう。「ブレードサーバ」について。
ブレードサーバは、それ単体では電源が入りませんし、ラックに収容することもできません。シャーシやエンクロージャと呼ばれる入れ物とセットで利用します。
日本でも欧米製のブレードサーバが広く使われていますが、購入して数年経つと、欧米と日本を中心としたアジア圏では、ある“ズレ”が生じはじめます。
例えば、まったく新しいシステムを作ることを考えてみてください。エンクロージャに空きスロットがあります。「ここでいいよね、ちょうど空いてるし」と思いませんでしょうか。もし、イメージが湧きにくいようでしたらネットワークスイッチでも構いません。「このポート空いてるし、ここに差せばいいじゃない」みたいな。
サーバ老朽化にともなうリプレース検討もそうです。5年使ったサーバは性能の陳腐化も目立つため、心置きなく退役させられるかもしれません。しかしながら、エンクロージャやスイッチはそのまま使いたい。有効利用したいというのが日本人の当たり前の感覚ではないかと思います。
「流用したい」「有効利用したい」──。
スペースが空いているならば、埋めたい衝動に駆られます。これは、国土の狭い日本人のお国柄でしょうか。しかし、欧州も小さな国が多いにも関わらず、違うらしいのです。どうやらアジア圏特有の考え方だそうです。
では、「流用はほとんどない」という欧米の情シス部門は、自社のシステムをどのように考えているのでしょう。IT予算に糸目はつけないのでしょうか?
(続く)
日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。
カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション
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