2つ目の「上位組織や個人の目標との関連性を持たせる」ですが、具体的には上位組織が示しているビジョンと自部門とが関わりがあると分かるようにビジョンを設定します。ここで言う上位組織とは、課のビジョンなら部全体、部なら事業部全体、事業部なら企業全体というイメージです。
これはメンバーのモチベーションや団結感を出すために大切な要素です。メンバーの中には、チームが進む方向性や自分に求められている価値を理解することで、安心して行動できる人もいるためです。自分で考えて行動する人にとっても、求められている方向性を知ることで、より気の利いた行動を起こせるというメリットもあります。
自分(自部門)の仕事は、自社にどのような影響を及ぼしているか――各メンバーは思った以上にその点を意識しています。個人の目標が達成できると、チームのビジョンが達成でき、チームのビジョンをやり遂げると、会社のビジョンを実現できるような道筋が見えるようにするのが望ましいでしょう。
3つ目は「形を整える」です。ビジョンはできるだけシンプルに、そして覚えやすいものが望ましいです。メンバーに“耳にタコができるぐらい聞いた”と言われるくらいには繰り返し伝えるものなので、耳に残りやすく、かつ伝えたいメッセージがまとまっているものが必要です。
とはいえ、初めてビジョンを作るというような場合は戸惑うこともあると思います。まずは例として、空白の部分を埋めるように、言葉を入れてみてください。
私たちは「 」の分野で「 」によって、顧客に「 」を提供する「 」な集団を目指します。
言葉を入れてみた後は、自分1人だけで完成させようとせず、信頼する右腕に“メンバーが聞いてみてどう思うか”など意見を聞きながら調整していきましょう。自分が気に入っているフレーズが却下されることもあるかもしれませんが、メンバーの目線でより分かりやすく伝えられる言葉を選びましょう。
私が以前在籍していた、顧客のクレーム対応を行う部署では、壁にでかでかと「顧客に感動を!」といったニュアンスで書かれた垂れ幕が飾られていました。配属当時は「“クレームで感動”か……随分と現実離れしたこと言ってるな」と思いましたが、「何かやらなくちゃいけない感じがする」「思いがこもってるな」といった何かしらの“パワー”を感じたことを覚えています。
このビジョンは毎日目にすることで、「目の前の顧客がどうしたら感動してくれるだろうか」と、何かを判断したり、対応に困ったりしたときの指標となってくれました。もう10年ほど昔の話ではありますが、よいビジョンは記憶にも長く残ります。
さて、これら3点を踏まえたビジョンを聞いたとき、メンバーは“ワクワクする未来像”を描けるでしょうか? もしくは何らかのパワーを感じるでしょうか。プロマネ自身がワクワクしないような、思いやチカラも感じられないビジョンでは、メンバーがついてくるはずがありません。せっかくチームとして集まったのですから、プロマネとして、ビジョンを通じてメンバーが楽しく働ける土台を作っていきましょう。
さて、次回はこれら「プロジェクトのゴール」「チームのビジョン」を効果的に共有する方法を考えていきます。お楽しみに。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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