産地の声が届く接客、大型チェーンでも 四十八漁場を変えたITの力(前編)SNSで社外を巻き込む(1/2 ページ)

産地や食材の情報を伝えて、もっと食を楽しんでほしい――。そんなおもてなしで注目を集めるのが魚料理の「四十八漁場」だ。大型チェーン店では難しい、“現場のリアルを伝える接客”を可能にしたのは、あるITツールのおかげだった。

» 2015年11月18日 08時00分 公開
[西山武志ITmedia]

 産地や食材の情報を伝えて、もっと食を楽しんでほしい――。魚料理のチェーン店「四十八漁場」(よんぱちぎょじょう)が、そんなおもてなしで注目を集めている。

 四十八漁場の特長は、市場を介さず全国の漁師と直接取引しているところ。接客については、漁師と店との距離の近さを生かして情報を収集し、それをメニューの説明に取り入れることで質を高めようという戦略だ。

 しかし、食材にこだわる小さな店ではいざしらず、15店舗を数えるチェーン店でこうした接客を展開するのはなかなか難しいもの。それを可能にしたのは、企業の情報共有ツールとして注目されている企業向けSNSだったという。

 店長からアルバイトスタッフまで、同じマインドで接客できるようにするために、店舗はどんな形でSNSを活用しているのか。エー・ピーカンパニーで情報インフラの企画運用を担当する管理本部経営管理部 部長の鈴木翔太さんに聞いた。

Photo 魚料理のチェーン店「四十八漁場」

社内メールは4割減、社内SNS導入で連絡のムダが激減

―― 社内SNSは、いつ頃からどんな経緯で導入したのでしょうか。

Photo エー・ピーカンパニーで情報インフラの企画運用を担当する鈴木翔太さん

鈴木翔太さん(以下、鈴木氏) 導入は、2011年に入ってからですね。当時の社内コミュニケーション手段は電話と電子メールが中心で、時にはFAXも使っていました。当初は、こうした既存の連絡方法で発生する“コミュニケーションコスト”の削減が目的でした。

 別の飲食店を経営する企業での活用実績があった「トークノート」の評判がよく、導入してみようと話が進みました。シンプルなデザインで、ITリテラシーが高くないユーザーでも直感的に使える点を評価しています。

―― メールや電話などのコミュニケーションによって、どんなムダが生じていたのでしょう?

鈴木氏 うちは飲食チェーンという業態のため、本部が全国の店舗を取りまとめる“1対多”の構図になっています。その上、施策の伝達の他にもメニューや食材の変更など、全店舗のスタッフ一人ひとりに伝えるべき連絡が多いんです。それらの情報を現場に確実に落とし込もうとすると、既存の連絡手段はとても効率が悪いんです。

 一斉メールでは確認されずに流されてしまうことも多いし、それぞれの店舗に個別メールや電話をしようものなら莫大な時間がかかってしまう。SNSなら個人がそれぞれ持ち歩いているスマホでチェックできて、レスポンスを返しやすいツールとして浸透しています。そこに導入メリットを見いだしました。

 メールのやりとりは返信がないと、送った内容を相手が把握したかどうか判断できません。その返信が面倒で「すぐ連絡できないから後で確認しよう……」と開封を後回しにしてしまい、それがメールの見落としにつながっていたんです。トークノートには「いいね!」機能があって、1クリックで内容を確認したことを表明できます。情報の受け手の精神的な負担が軽減されたことで、連絡の伝達効率は格段によくなりましたね。

 社内SNSの導入で、社内メールは4割以上削減できました。業務連絡にかける時間も、導入前に比べて大幅に短縮できている実感があります。

情報共有でアルバイトの接客に変化

―― 「コミュニケーションコスト削減」の他に、社内SNSが会社にもたらしたプラスの効果はありますか。

鈴木氏 四十八漁場では、正社員からアルバイトまで全スタッフに社内SNSのアカウントを配布しています。コスト面の負担は大きくなりますが、導入によって思わぬコミュニケーション文化が生まれているんです。

 トークノートの各業態のグループでは、スタッフがよく「今日は、お客さまにこんなサプライズをしたら喜ばれました!」「○○店に生産者が来てくださいました!」という報告をしてくれています。

 今までは店長経由で本部にしか届かなかった現場の好事例が、全スタッフに直接共有されるようになって、そこにたくさんの「いいね!」がつく。ノウハウのシェアだけでなく、他の人からの評価がモチベーション向上にもつながる……これは、社内SNSによって生まれた革命的な効果だと思っています。

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