産地の声が届く接客、大型チェーンでも 四十八漁場を変えたITの力(後編)(2/2 ページ)

» 2015年11月20日 07時00分 公開
[西山武志ITmedia]
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Photo エー・ピーカンパニー管理本部経営管理部で部長を務める鈴木翔太氏

鈴木氏 便利なツールであれば自然と馴染んでいくと思います。定着させるコツは「社内のキーマンに使ってもらうこと」。この“キーマン”は、役付きかどうかではなく、社内で影響力がある人のことを指します。

 明るくて新しいモノ好きで、いつも周りを巻き込んでいくような人っているじゃないですか。学校のクラスで言えば、“学級委員長ではないけれど、人望のある人気者”みたいな存在(笑)。そういったキーマンに真っ先に使ってもらって、その人を通じて「このツール使うと便利だよ」と口コミで広めてもらうんです。

 うちの会社で新しいシステムやツールを導入する際には、必ずこの作戦ですね。トップダウンで講習会を開くよりも早く、そして確実に浸透していきますよ。

見えないコストの削減は、いつか必ず“目に見える利益”に

―― 四十八漁場では今後、SNSをどのように使っていきたいと考えていますか。

鈴木氏 情報の交通整理を続けながら、伝達フローをどんどんスリムにしていきたいですね。それとは別のベクトルで、スタッフ間の自由な交流が活発に生まれるような場所も増やしていきたいと考えています。また、魚以外の全業態でもアルバイトを含めた全スタッフに、社内SNSのアカウントを配布したいですね。

―― 企業SNSの導入障壁として、“目に見える形の利益につながらない、売上との相関関係が判断しにくい”という理由が、他社ではよく挙げられています。なぜエー・ピーカンパニーでは「アルバイトまでアカウントを配布してSNSを使えるようにする」という取り組みができるのでしょうか。

鈴木氏 「社内の隅々まで情報を伝えることの重要性」と「情報伝達にかかる目に見えない時間的、精神的負担」の2つに対して、上層部が理解を示していることが大きいですね。SNSの導入によってコミュニケーションコストを削減できて、それが確実に売上につながっている――という認識は、社内全体で共有できています。

 アルバイトに社内SNSを使ってもらう理由もシンプルで、彼らが最もお客さまと近い場所で働くスタッフだから。現場でお客さまと向き合う彼らにこそ、理念と情報を伝える必要があるんです。

―― 現場の末端まで情報を伝達できているからこそ、多店舗展開ながらも“チェーンらしくない雰囲気の店づくり”ができているんですね。

鈴木氏 そこにはスタッフ教育など他の要因も絡んできますが、社内SNSのようなツールが貢献している部分は少なからずありますね。

 弊社ではスタッフの自発的な行動を尊重しており、現場の判断は個人に委ねていることが多々あるんです。その判断のための材料として、少ないコストで的確な情報をスタッフに提供すること――それが、本部としての私たちの務めだと思っています。

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