第32回 メールアドレス、子会社のドメイン名はどうつける?テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(2/2 ページ)

» 2015年12月04日 07時30分 公開
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メリットとデメリット

 このように欧米と日本で異なる理由を考える前に、まずは両者のメリット、デメリットを考えてみましょう。

 完全に新規のドメインを取得する「@ABC-TECH.com」型の場合、新しいドメイン名がシンプルであるため、今後認知されやすいと思います。しかしながら、親会社と依存関係がないドメインになるため、親会社同様にきちんと維持管理していかなければなりません。

 これに対して、サブドメインの形で親会社とつなぐ「@tech.ABC-CORP.com」型の場合、親会社の印象が強く出過ぎる印象です。しかしながら、親会社のドメイン名が広く知られているのであれば、当の子会社が知られていなくとも、親会社のの関連企業であることは明白であり、信頼されやすいでしょう。いわゆる「母体がしっかりしている」というやつです。また、ドメインの維持管理もラクチンです。

 ドメイン名による子会社の認知度を考えてみると、当然ながら、最初は親会社で既に認知されている後者型パターン(@tech.ABC-CORP.co.jp)の方が大きいでしょう。しかし、長い目でみると、シンプルなドメインの前者型パターン(@ABC-TECH.co.jp)の方が認知されやすくなると思います。ここは「コーポレート・ブランディング」をどう考えるか。企業グループ全体で考えていく必要もあるかもしれません。

本当は現実に即して選んでる?

 後者のメールアドレスを持つ友人にこの話をしたところ、すんなりと納得したようです。そして1つのヒントを教えてくれました。それは「主従関係」―――。

 確かにそうかもしれません。先ほど「製造業と自治体に多い気がする」と書きましたが、自治体はもちろん、製造業も縦のつながりが非常に強い。製造業は作り手(メーカー)であるとともに、製品販売も行いますので、たかがメールアドレスと言えども、コーポレート・ブランディングは重要です。子会社の認知度よりも親会社のブランディングを優先すべきというケースもありそうです。

 欧米企業にも、もちろん企業グループはあります。しかしながら、日本よりフラットな組織構造であり、下請け中心で主従関係のある事業子会社は作るといったことも少なそうです。このあたりは法律や税金対策など、国ごとの事情があるのかもしれません。

 さらに日本と違うところとして、子会社を設立してもドメイン名は新しくせず、親会社のシンプルなドメイン名を子会社にもそのまま使わせる、というケースも多いように思います。冒頭の例ではABCテクノロジー社員も「@ABC-CORP.com」ドメインを使わせるといったものです。批判を恐れずにいえば、日本では「上下関係はハッキリさせろ!」とか「親会社か子会社か区別できないじゃないか!」という意見が出そうですね。

 メールアドレスからかなり話が広がってしまいました。社員個人のメールアドレスにどこまでブランディングが必要か、というところもありますが、親会社から独立したドメイン名にするか、長くなってもサブドメインを取るかなどは、その会社の特性次第でしょう。

 「日本だから……」「他の子会社がこうだから……」ではなく、きちんと考えることが重要です。

メールアドレス たかがメールアドレス、されどメールアドレス。

小川大地(おがわ・だいち)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション


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