スピード経営時代に効く、「アプリ・サービス開発」の新潮流

教員にも“1人1台タブレット”、「iPad用業務アプリ」を内製する中学校開発者は1人の職員(3/3 ページ)

» 2015年12月07日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
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親しみやすくシンプルなデザインにこだわり

 西岡さん自身はデータベースに関する知識はほぼなく、Accessに詳しかったというわけでもない。参考書は2冊ほど買ったものの、後は触って覚えたりカンファレンスで講演者に質問したりしたそうだ。

 「プログラミングの知識が必要なく、日本語でアプリを作れるので“素人”でも作れるところはいいですね。一方で周囲にFileMakerについての知識を聞ける人がいなかった点は苦労しました。最初は本とネットぐらいしか頼るものがなく、途方にくれたときもありましたね」(西岡さん)

 ITに関する知識は少なかったが、美術を専門で学んでいたこともあり、デザインにはこだわって開発を進めた。まず、シンプルな画面構成で使いやすく、そして親しみやすい見た目にしようと心掛けたという。

photo 秋に行われる学校説明会では、ハロウィン風のデザインに仕上げた。こうした絵に対してポジティブなコメントが寄せられることが多いという

 「業者に頼むとかっちりとしたデザインで出てくることが多いですが、ITが苦手な教職員でも“使ってみよう”と思えるように季節に合わせたデザインを入れたり、楽しい見た目にしようと工夫しました。また、操作を複雑にすると使う気が失せてしまうこともあるため、タブを使うような操作を避け、なるべくボタンを押すだけで操作が完結するようにしています」(西岡さん)

 また、教職員から改善点の要望が挙がれば、早めに対応をすることにしているという。桜丘中学・高校には左利きの教職員が多く、「左利き用の配置を加えてほしい」と依頼を受けたところ、すぐに左利き用の画面と切り替え用のボタンを配置した。このように、ニーズに対して小回りが利いた対応ができる点もインハウス開発ならではメリットといえる。

インハウス開発の“課題”

 もちろん、インハウス開発自体にも課題はある。システムを開発する職員の負担が増えることだ。システム開発の専用スタッフがいれば問題ないものの、人員が限られた教育機関では教職員が通常業務と並行して進めざるを得ない。

 西岡さんは開発専任の職員ではない。特に最近はニーズが出てきたこともあり「並列でやるのは厳しくなってきた」という。iPadの利用が増えるにつれて、ヘルプデスク的な業務も増えることが予想されるし、独自で作ってきたアプリの仕様はどうしても引き継ぎがしづらい形になっている。通常業務とのバランスも含めて、こうした点が今後の課題になるだろう。

 それでも西岡さんは、今後もインハウス開発を続けていくと強調する。「教職員全員にiPadを活用してもらうというミッションは変わりません。今あるデータを取り込み、検索や共有できるようにすることで、問題を解決していく役割を追求したいと思っています。基本的にとても簡単な使い方しかしていませんが、iPad導入時と同様にあまり難しく考えずに“まずやってみよう”という意識で取り組むことが大事だと思っています。もちろん、人は増やしてほしいとは思っていますけどね(笑)」(西岡さん)

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