第14回 「延命措置」で旧システムからDocker環境に移行する方法古賀政純の「攻めのITのためのDocker塾」(1/5 ページ)

古いIT資産をDocker環境へ移行するには多面的な検証が必要です。今回は「延命措置」のシナリオから、実際に古い物理サーバからDocker環境へ移行する手順を紹介します。

» 2016年01月20日 07時30分 公開

P2Vは、必ずしもうまくいくとは限らない

 前回の記事では“根が深い”古いIT資産をDocker環境へ移行する方法について見てきました。4つの方法について、それぞれ多面的に検討する必要があり、単純にユーザーデータのみを吸い上げてリストアできればよいというわけにはいきません。

 その中でも比較的、行われている古いIT資産の移行方法は、物理サーバ環境の内蔵ディスクをイメージファイルとして吸い上げ、オンプレミスの仮想化環境、あるいはDocker環境に移植する方法です。このような移植は、古いサーバ環境のOSとアプリケーションをそのまま新しいハードウェア環境で使い続けることになるため、「延命措置」と呼ばれます。

 延命措置は、古いOSとアプリケーションをそのまま利用するため、OSのインストール、セットアップ、アプリケーションの新規開発・構築をせずに済むという開発工数を削減するメリットがあります。そのために、物理サーバから仮想化基盤への移行ツールがリリースされています。オープンソースで提供されている無償のP2Vツールとしては、以下が挙げられます。

表:オープンソースのP2Vツールの例

方法 KVMゲストOSイメージに変換 Docker環境に変換 備考
ddコマンド 可能 なし Linux標準コマンド
virt-p2v 可能 なし CDブートで旧サーバを起動
Relax and Recover 可能 なし NFSサーバへの保管が可能
MondoRescue 可能 なし リカバリDVDの作成が可能
Clonezilla 可能 なし ミラクル・リナックスの商用版が有名
openQRM 可能 なし 異種混在の仮想化環境に対応

 しかし、物理サーバから仮想化基盤への移行を実現するP2Vツールは、決して万能ではなく、古いサーバのハードウェアを正しく認識し、正確にP2Vが実行できるかどうかは、やってみないとわからないというのが現実です。

 さらに、上記の表からも分かるように、物理サーバ基盤をDocker環境に直接移行するツールは、2016年現在リリースされていません。そこでDocker環境への移行は、P2Vツールを使って仮想化環境のゲストOSイメージに変換し、ゲストOSイメージをさらにDockerイメージに変換する必要があります。今後は物理サーバからDocker環境、あるいはハイパーバイザ型の仮想化環境からDocker環境への移行ツールなども整備される可能性がありますが、いずれにせよ物理サーバから別の環境への移行は、さまざまなツールが存在するものの万能ではなく、うまく動かない場合もあるということを念頭において、移行計画を立案する必要があります。

古い物理サーバ資産をDockerへ移行してみる

 それでは、具体的に古い物理サーバで稼働するアプリケーションの環境をDockerに移行してみましょう。今回は話を単純にするため、外部ストレージを接続していないサーバ単体で稼働するアプリケーション環境の移行を前提に進めます。まず、移行元となる古い物理サーバと移行先のDocker環境は以下の通りです。

項目 移行元 移行先
使用開始時期 2007年11月 2015年4月
サーバ機種 HP ProLiant DL365 G1 HPE ProLiant DL160 Gen9
CPU AMD Opteron 2218 2.6GHz x2 Intel Xeon E5-2603 1.6GHz x1
メモリ 4Gバイト 24Gバイト
NIC 1GbE x2ポート 1GbE x2ポート
RAIDコントローラ HP SmartArray P400i HPE SmartArray B140i
HDD容量 72Gバイト 3テラバイト
論理ディスク /dev/cciss/c0d0 /dev/sda
パーティション /dev/cciss/c0d0pX /dev/sdaX
外部ストレージ接続 なし なし
OS RHEL 5.9 x86_64版 CentOS 7.2
仮想化での利用 なし なし
用途 社内Webサーバ Dockerホスト
コンテナエンジン なし Docker 1.9.1
移行ツール virt-p2v virt-v2vとvirt-tar-out
IPアドレス 172.16.1.65/16 172.16.32.5/16
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