「多様性がないと生き残れない時代」 LGBT当事者が語るマネジメント論――川田篤さん「プロジェクトマネジャー」の極意(3)(2/4 ページ)

» 2016年02月01日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

“修羅場”の日々から学んだこと

photo 日本IBM IBMシステムズソフトウェア PA&ソフトウェア・パートナー・プログラム部長 川田篤さん

 川田さんを苦しめたのは営業成績の管理業務だ。膨大なデータを表計算ソフトで作成していたが、他の役職との兼務だったこともあり、仕事が終わらず、朝まで仕事をする日が普通にあったという。仕事の優先順位のコントロールも上手くいかず、1年で管理職から外れた。

 「グローバルのプロセスをメンバーに展開できなかったこと、そして目の前の仕事にとらわれすぎたことが原因だと思っています。体力的にも精神的にもきつかったですが、何より結果が出せなかったことが一番辛かったですね」(川田さん)

 しかしこの失敗を“バネ”にして川田さんはマネジャーとしての経験を積んでいく。ライセンス関連の業務を行いながら、時には会社買収のプロジェクトマネジャーを任されることもあったという。2014年にはIBM Bluemixをはじめとした、SaaSソリューションを販売するWebコマースサイトを自らリードして短期間で立ち上げ、全世界のIBMで年間500人しか選ばれない「Best of IBMer」を受賞している。

 「会社買収では人事や不動産、経理など、会社がどうやって動いているか知ることができました。このプロジェクトでできた社内のつながりが、別の業務でも生きています。いろいろなことに携わったおかげで『分からないことは川田に聞け』というキャラになってしまいましたけども(笑)」(川田さん)

マネジメントにダイバーシティの考え方を

 そんな川田さんはプロジェクトマネジャーとして、「メンバーに方向性を示すこと」と「メンバーに自由闊達にやってもらうこと」の2つを大切にしているそうだ。

 「自発的に動いてくれることが大切だと思っているので、あまり強い働きかけはしません。もちろん、メンバーが期待通りに動かなくてやきもきすることも多々ありますが、細かい指摘するのをぐっとこらえます。もともと自分が“自由にやらせてほしい”という人間だったので(笑)。ヘルプが必要なときは自分から動いてもらうことを期待しています。助けを求めるのもまたスキルですから」(川田さん)

 そして、欠点をつぶすのではなく長所を伸ばすように仕向けるのも、川田さん流のマネジメントだ。「何かの能力に秀でていた方が応用が利く」ということで、マイナスよりもプラスの点に着目してメンバーを見ているという。

 「会社においても1つの価値観で全員を引っ張るのは難しくなってきています。チームとしてよりよい成果を出すため、目標や方向性をうまく共有する必要があるでしょう。ここに“ダイバーシティ”が求められるのだと思います。

 メンバーには、仕事を通じて自分が充実していく実感を味わってほしいです。自分は仕事にのめり込んだ人間ですが、もちろんそうではない人でも、仕事との向き合い方に悩むことはあるはず。仕事との関係はいつまでもついて回ることなので、何をするにしても悔いが残らないように支えてあげたいと思います」(川田さん)

 多様性を認めることで1人1人の力を最大限に発揮し、チームや組織に貢献できる環境を作ること――。川田さんはこの動きをプロジェクト内だけではなく、社内全体で展開している。LGBTコミュニティーのリーダーという活動だ。

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