これだけの第一線の研究者が揃った機会なので、AI技術の将来はどうなっていくのかという視点を踏まえて筆者は質疑応答で、「2001年宇宙の旅という映画に出てくるHALのようなコンピュータは実現するか」と聞いてみた。すると4人が次のように答えてくれた。
「HALは自分を守ろうと、人間に対抗する意思を持ったために問題が起きた。そのような意思を持たないようにAI技術をつくらなければならない。AIはあくまでも人間のサーバント(付き人)でなければならない。そのように技術をつくるのは、つまりは人間の責任だ」(池内氏)
「HALのようなAI技術は将来的に実現できるだろう。というのは、技術水準もさることながら、人間自体に自分たちと同じようなロボットをつくりたいとの欲求が心の奥底にあるからだ。マイクロソフトがAI研究の一環で開発した“りんな”に対しても人間と同様にやり取りしているユーザーが少なくない。ただ、そうしたロボットにどこまでの自律的な機能をもたせるか。人間の欲求との葛藤が今後も続くだろう」(リー氏)
「結局はAI技術を生み出す研究者が、人間をどうサポートするかという基本的な考え方に立つことに尽きるのではないか。将来的にはHALを実現できる技術レベルに達するだろうが、それを万一悪用するような考え方をすれば、挙げ句の果てに人類は滅びてしまう」(上田氏)
「一研究者として、こうした質問には慎重に答えるように心掛けている。HALのようなコンピュータはいつか実現できるだろうが、近い将来だとは思っていない。ただ、今AI技術があらためて脚光を浴びるようになってきた中で、今後どのように活用していけばよいのか、その際のリスクも含めてそろそろきちんと議論すべき時期に来ているのではないかと考えている」(杉山氏)
筆者も杉山氏の意見に全く同感だ。今回はおよそ2時間のラウンドテーブルで筆者が印象に残った部分だけを記したが、AIをめぐる議論は本当に大事だと思うので、ぜひともこうした機会が増えることを期待したい。
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