3Dホログラムでパイロットの訓練を――JALの「HoloLens」用業務アプリ、その狙いアジア初の導入事例(2/2 ページ)

» 2016年04月19日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]
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経営陣の説得、エンジンのホログラム作成に苦戦

 Microsoftからの紹介を受け、JALがHoloLensの導入に意欲的だったこともあり、5月にはプロジェクトの担当者が渡米して実機を体験。そこから全社的にHoloLensの長所が生かせる業務を考えた末、今回開発した2つの用途に絞ったのだという。

 アプリのコンセプトは「飛行機を一機丸ごと教室に持ってくる」こと。8月には要件がまとまったが、プロジェクトリーダーの速水さんは「ここから経営陣を説得するのに苦労した」と話す。

 「経営陣にアプリの説明をしても『それはゲームか何かなの?』という感じで、ホログラムがどういうものなのか、なかなか分かってもらえなかったのが難しかったですね。体験してもらうのが一番早いのですが、当時HoloLensは日本に持ち込めず、米国のレドモンドまで行くしかなかった。結局HoloLensについては理解されなかったものの、疑似体験できるという点で納得してもらいました」(同社 商品・サービス企画本部 業務部 業務グループ長 速水孝治さん)

photo 発表会でデモを行ったJAL HoloLensプロジェクトリーダーの速水孝治氏(左)と、JAL HoloLensプロジェクトマネージャーの澤雄介氏(右)

 アプリ開発が始まったのは2015年12月。そこから約3カ月で2つのアプリが完成したが、整備士用訓練アプリの開発が難しく、特にエンジンのホログラムを作るのに苦労したという。

 「私たちはエンジンのメーカーではないため、エンジンの設計図やCADデータを持っているわけではありません。今回ホログラムを作るにあたって、数万枚の写真を撮影し、そこからMicrosoftがホログラムを作り上げました。撮影のときはとにかく大変でした。正直な話、この作業で2回ぐらい徹夜しましたね(笑)」(速水さん)

photo エンジンの精巧なホログラムを作るために、エンジンの写真を数万枚撮影したという

 JALはHoloLens以外にも、Google Glassなどウェアラブルデバイスを積極的に業務に取り入れようと数々の実証実験を行ってきた経緯がある(関連記事)。従業員の生産性やサービス品質の向上、そして次世代のイノベーションを目指した取り組みとのことだが、身体性を伴った仮想訓練は、航空会社以外にも広く需要がありそうだ。

 「今回はGoogle Glassのような本部との通信が主体ではなく、ホログラムの業務利用ということで、HoloLensがわれわれが実現したかったことに一番近かったというのが本音です。今後は旅客営業や貨物、空港内など、他の業務における利用シーンも検討していきたいですね」(速水さん)

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