さて、このOracle Cloud Machineにオラクルが込めた思惑とは何なのか。果たしてクラウドサービスとして定着するものなのか。杉原氏が発表会見で、次のような興味深い話をしていた。
「オラクルではオンプレミスとパブリッククラウドの間に、両方をつなぐハイブリッド利用とともに、ユーザーの手元でそれぞれのメリットを享受できる利用形態が求められるようになると見ている。その利用形態を“Oracle Cloud At Customer”と名付けてコンセプト化した。今回のOracle Cloud Machineはそのコンセプトに基づく第1弾のサービスだ」
さらに杉原氏はこう続けた。
「日本のIT市場で見ると、現在、全体が15兆円規模の中で、プライベートクラウドは6000億円、パブリッククラウドは3000億円、つまりクラウド市場は合わせて9000億円規模となっている。これが2019年には倍増以上の2兆円規模になると見ており、その勢いは私も日々実感している。そうした中でユーザーニーズが高まってきたのが、Oracle Cloud At Customerの利用形態だ。クラウド市場が2兆円規模になったとき、この新しい利用形態が一定の割合を占めている可能性が高い。私たちはそうした見立てで今回の新サービスを投入している」
どうやら、話は新たなサービスを出しただけではないようだ。「Oracle Cloud At Customer」と呼ぶ新コンセプトに注目する必要がある。杉原氏によると、このコンセプトのもとで今回のOracle Cloud Machineに続いて、「Oracle Exadata Database Machine」および「Oracle Big Data Appliance」によるパブリッククラウドサービスを予定しているようだ。
Oracle Cloud At Customerによるユーザーメリットは、先述のOracle Cloud Machineによる内容があてはまるだろう。さらにオラクルのビジネスとしても、ハードウェアリソースの有効活用やパートナービジネスの活性化が見込める。「例えば、パートナー企業が自社のデータセンターにOracle Cloud Machineを導入して、自らの顧客に付加価値をつけたクラウドサービスを提供するケースも想定できる」(杉原氏)という。
今、企業向けクラウドサービス市場では、パブリッククラウドとプライベートクラウドに“いいとこ取り”をしたホステッドプライベートクラウドサービスが注目を集めている。今回オラクルが打ち出したOracle Cloud At Customerは、データを手元で保管したいユーザー向けに同様の利用形態を提供するものとも見て取れる。
クラウドサービスを“箱”で提供するのは本末転倒のような気がしないでもないが、ユーザーにとって多様な選択肢があるのは基本的によいことだろう。ただ、オラクルの場合はオンプレミスで既に巨大な顧客ベースを保持しているだけに、同社からすれば手厚い支援策だろうが、外から見れば実にしたたかな顧客の囲い込み戦略と映る。
だが、ビジネスの基本は顧客の囲い込み合戦だ。ひょっとしたらOracle Cloud At Customerは、オラクルにとって今後の大黒柱になり得る戦略事業なのかもしれない。
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