「ビジネスのデジタル化」が進む今、多様化する顧客動向をいち早く把握し、ビジネスの価値を創出することが求められている。それを支えるのがデータ活用基盤。ITmedia エンタープライズ主催セミナーでは、フラッシュストレージに焦点を当て、その進化と活用方法を紹介した。
日進月歩でITが進化するなか、ビジネスの世界でも急速に“デジタル化”による新たな価値創造が進んでいる。消費者はいつでもどこでもインターネットを経由して人やサービスにつながるようになり、消費者と消費者、そして消費者と企業の関係性は一変した。
最近ではUber、Alibaba、Airbnbといった新世代企業が、アイデアを素早く実行に移し、受け入れられると判断するやビジネスを急速に拡大して成功している。企業も、新たなテクノロジーを積極的に取り入れ、これまでとは異なる新たな視点でビジネスを展開する戦略が求められている。
IT活用でビジネスが変わる現代において、企業が注力すべきポイントはどこなのか、どのようにITインフラを見直すべきか――。5月13日に開催されたITmedia エンタープライズ ソリューションセミナーでは、この“デジタル変革時代”を支える新たなデータ基盤について、日本アイ・ビー・エム(以下、IBM)が講演を行った。
デジタル時代のビジネスでカギとなるのは「データの使い方」だが、企業が取得できるデータは増える一方だ。消費者が手にするさまざまなデバイスから生まれるデータに加え、消費行動や考え方に大きな影響を与える気象情報や位置情報、ソーシャルネットワーク上の口コミや写真や動画、センサーと送受信するデータも合わせると、それは膨大な量になる。
膨大なデータから知見をタイムリーに導き出し、収益に結び付くビジネスを生み出すのが理想だが、消費者の“今”が分かる新鮮なデータのほとんどは非構造化データであり、従来のシステムでは活用が難しいという課題があった。しかし、IBMのコグニティブシステム「IBM Watson」の登場で状況は変わったと波多野氏は話す。
「企業内の定型業務や定型データで構成されるSoR(System of Record)と、消費者が手にしている情報やIoTなど、企業外から取り込まれるデータなどから成るSoE(System of Engagement)の双方をデータレイクに集約し、構造化・非構造化データを問わず、コグニティブシステムで分析。有用な知見を引き出し、事業展開に活用できるようになりました。Watsonを本格的に使えるようになると、企業のIT基盤も今までと異なる環境が求められるのです」(波多野氏)
IBM Watsonは非構造化データを含む膨大なデータを、理解し、学習し、予測できるのが特長という。こうしたコグニティブなシステムを最大限活用するには、ITインフラ、特にストレージ環境もハードウェアの制約を受けない形で、データの連携や活用ができる環境が求められる。つまり、データレイクの整備だ。その上で、システムの高速応答も重要なポイントだと波多野氏は指摘した。
「消費者は常に素早いレスポンスを求めます。よく言われている“(待てるのは)3秒”というのはもう古く、“1秒”の争いになっています。1秒以内に分析して応答できないと、消費者は去ってしまう。従来型のストレージでは約200〜300ミリ秒の処理機能を搭載していますが、それではとても間に合いません。“マイクロ秒”の世界で、I/O処理して対応できる高速環境が必要になります」(波多野氏)
こうしたニーズに応えるため、IBMは「SDS(Software Defined Storage)」と「フラッシュストレージ」に注力し、その技術をFlashSystemシリーズに結集してきた。同社は5月、このラインアップに「FlashSystem A9000」「FlashSystem A9000R」の2製品を投入。講演で両製品の特長を説明した。
新製品はどちらもクラウド環境での導入を意識した設計になっており、A9000はVMI(仮想モバイルインフラ)やVDI基盤の利用に向くスケールアウト型ストレージ。一方のA9000Rはペタバイト級のデータを扱うような分析に向くスケールアップ型のストレージだ。
「IBM FlashCoreテクノロジー」で高速化したストレージボードを搭載し、高精度のリアルタイム圧縮やデータ削減機能などを実現する150以上のテクノロジーを実装しているという。これにクラウドストレージ製品に搭載しているSDS「IBM Spectrum Accelerate」を組み合わせた。
「SDSレイヤーとハードウェアを独立で設計し、ハードウェアに依存しないデータ運用を実現するとともに、高速かつ可用性の高い製品に仕上がりました。A9000およびA9000RはSoftware-Definedと最適化されたハードウェアをうまく組み合わせた製品といえるでしょう」(波多野氏)
日本IBM システムズ・ハードウェア事業本部 ストレージ・エバンジェリストの佐野正和氏は、「FlashSystemファミリー」の開発コンセプトや、クラウド基盤での利用を主眼に機能を充実させたFlashSystem A9000、FlashSystem A9000Rの特長について解説した。IBMはこれまでさまざまな分野でフラッシュストレージ製品を投入してきたが、その全てにフラッシュチップの能力を最大限に引き出すIBM FlashCoreテクノロジーを搭載しているという。
フラッシュチップを採用したデバイスでまず思い浮かぶのはSSDだろう。しかし、SSDはHDD互換であるがゆえの欠点がある。チップが1つ壊れただけでもボードは全損扱いになる上、複数のチップがあってもリードとライトの同時並行処理は行えない。佐野氏は「SSDでは、せっかくのフラッシュチップの能力を最大限に引き出せない」と話す。
これに対し、フラッシュチップの能力を最大限に発揮させるというコンセプトで開発したのがFlashSystemシリーズである。汎用CPUとソフトウェアで制御するのではなく、独自開発のハードウェア機構で高速化を追求している点が特長だ。
例えばストレージボードは、2個のFPGAコントローラーと12個のフラッシュチップを実装。データの読み書き制御や暗号化などをFPGAによる制御で同時並列的にハードウェア処理することで、ソフトウェア制御による遅延の課題をハードウェア化して解決している。また、フラッシュチップはIBMの特許技術を採用した独自のRAID構成を実装し、HDDに対して50倍といわれる高い可用性とデータの保全性を実現している。
では、実際にFlashSystemを導入するとどうなるのか。佐野氏は“データベースのパフォーマンス向上”を50社以上の実例で示した。
その結果、大多数のデータベースでI/O待ち時間が80〜90%短縮され、処理の実行時間が半分程度になるという。さらに、同社の調査では1データベースにおけるコアを10個程度減らせ、IAサーバ換算で約4〜5ライセンスの削減にもつながるという。「フラッシュは、スピードは速いが値段が高い」「そこまでのスピードは必要ない」と言われることも多いが、うまく使えばFlashSystemでコスト削減にもつながるのだ。
今回発表されたFlashSystem A9000、A9000Rは、フラッシュ本来の性能を生かした超高速なFlashSystem 900をベースに、クラウド向けストレージとして数多く採用されているIBM XIVの高度な機能を実現するソフトウェア「IBM Spectrum Accelerate」を融合しているのが特長だ。
それに加え、データ容量の大幅な削減を目指した4つの機能(パターン削除、重複排除、リアルタイム圧縮、シンプロビジョニング)を効果的に組み合わせている。
具体的にはパターン除去と重複排除の後にデータをリアルタイム圧縮、未使用領域はフリースペースに格納するという操作を行っているが、重複排除は8Gバイト単位でパターンの認識と排除を実施し、4Gバイトずつずらす形で比較することで、重複パターンの発見精度を高めたという。「特に重複するデータが多い、クラウド環境やVDI環境(仮想デスクトップ環境)などで大きな削減効果が期待できる」(佐野氏)
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