第23回 非Linux環境のDocker、プレステも採用する“あのOS”で動かす意味古賀政純の「攻めのITのためのDocker塾」(2/4 ページ)

» 2016年06月01日 08時00分 公開

 オルビスOSは、連載第4回でも紹介したFreeBSD(フリー・ビーエスディ)をベースにしたOSです。フリーのBSD系OSには、代表的なものがいくつか存在します。その中でもFreeBSDが有名ですが、BSDと呼ばれるOS本体やそれを取り巻くソフトウェア自体は、もともと1977年から1995年までカリフォルニア大学バークレイ校の研究チームが開発していたものです。その後、このBSDがオープンソースソフトウェアとして発展し、FreeBSDとして今でもサーバやPCで幅広く利用されているのです。つまり、世界に誇る日本のゲーム機「PS4」は、WindowsでもLinuxでもなく、FreeBSDで動いているのです。

 FreeBSDは、サーバ用OSやPCでの開発用OSとして利用されているだけでなく、電子機器用のOSとしても採用されています。PS4以外に、例えば、DVDプレーヤーやネットワークスイッチなど、さまざまな機器にBSD系のOSが搭載されています。電子機器や家電製品に搭載されるOSとしては、Linuxが多く採用されていますが、BSD系のOSもまた、幅広く採用されているのです。

FreeBSDのブート画面。「マイナーなOS」というイメージが付きまとうが、組み込み機器や家電製品、サーバOSなど、幅広い分野で採用されている縁の下の力持ち

 「BSDがゲーム機や家電で使われているのは分かったけど、PCで使っているなんて聞いたことないよ」って思う人が多いかもしれませんが、実は「Mac OS」もBSD系のOSです。このようにBSDは、名前こそあまり知られていないものの、世界中の膨大な数のPCやゲーム機、電子機器、家電製品の中核エンジンとして、身を潜めるように動いています。

筆者が20年近く使っているOSは、WindowsでもMac OSでもなく、FreeBSDなのです!

 このような導入実績のあるFreeBSDは、IoT(モノのインターネット)でも大きな役割を果たすと期待されています。ただし、BSD系のOSがIoT用OSとして確固たる地位を確立するには、これまでの組み込み系OSでの実績をバネに、スマホ、PC、サーバ、スマート家電、電子機器、自動車、住宅、鉄道、飛行機、公共システム、街全体などがシームレスに連携する機能をOS側で過不足なく提供できなければなりません。

 そのため欧米において、IoT対応のOSとして出てくるLinux OSやBSD系OSの話は、Dockerとは無関係に、OSに搭載されるドライバがIoT機器でキチンと動作するかどうかという話に終始することがほとんどです。組み込み機器での実績を持つBSD系OSのコミュニティーでは、IoTやDockerを別々に議論することが多く、IoTにおいてDockerを活用する話は、実はあまり議論の対象になっていないのが現状です。

 そこで今回は、2020年のIoT時代における異種OS混在環境を見据え、欧米でもあまり議論が進んでいないFreeBSDとDockerの組み合わせに焦点をあててみます。アプリ爆発時代を見据えたDockerと、日本が得意の組み込み系OSとしても実績のあるFreeBSDを組み合わせることで、「日本発のIoTのスタンダード」が生まれ、世界を変える(?)かもしれません。

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