SAPが「HANA Cloud Platform」に込めた大いなる野望Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年06月13日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
前のページへ 1|2       

「デジタル・エンタープライズ・プラットフォーム」への野望

 SAPは今回の発表で、HCPの特長についてあらためて次のように説明している。

 「デジタル時代に求められる次世代ビジネスアプリケーションの開発・拡張・運用には非常に多くの機能が必要となるが、HCPではデータ分析エンジンや統計解析ライブラリをはじめとする多くの構築用ツールを備えているため、例えば在庫や課金、商品や顧客情報など、基幹系と連携したIoTアプリケーションやビッグデータ向けのアプリケーション、既存SaaSの拡張などをクラウド上でスピーディに構築・運用することができる」

 「加えて、セキュリティ、画面構築、モバイル対応、ストリーミング、地理空間情報、テキストマイニング、ドキュメント管理など、次世代ビジネスアプリケーションに必要なあらゆる機能を提供する」

 さらに、最新の機能拡充について、「S/4HANAやSuccessFactorsなどのSAPソリューションとの統合機能が拡張され、外部のビジネスアプリケーションとの連携を可能にするAPI統合機能も強化されたことにより、イノベーティブなビジネスアプリケーションの開発を加速する」ことや、「Cloud Foundryのβ版サービスも開始され、開発者が自由に開発言語を選択できるようになる」ことなどを挙げた。とくに、HANAについてはオープン性に懐疑的な見方があったが、「HCPはオープンスタンダードに基づいて開発した」(ルーカス氏)と強調していたのが印象的だった。

 これらの特長を踏まえて、SAPのソリューション全体の中でのHCPの位置付けを示したのが図2である。「この図が最新のSAPソリューションの全体像を表したものだ」と言いながら、ルーカス氏は次のように語った。

Photo 図2:最新のSAPソリューションの全体像(出典:SAPジャパンの資料)

 「HCPはあらゆるソリューションと連携し、インメモリ技術によってリアルタイムに全ての処理を行える。これから市場が大きく広がるIoTの世界に対しても、最適なプラットフォームになると確信している」

 確かに、図2に描かれたHCPの上にはIoTが乗っかっている。HCPの概念図はこれまでも幾度か見る機会があったが、筆者の記憶では、HCPの真上にIoTを据えたものを見たのはこれが初めてだ。これからは「IoTプラットフォームとしてのHCP」も前面に押し出していくものとみられる。

 福田氏はHCPについて、「これまでのクラウド分野のPaaSにとどまるものではない。もっと幅広いユニークな存在であることを、これから一層強く訴求していきたい」と力を込めて語った。では何と呼べばいいのか。「次世代プラットフォーム」では抽象的だ。ふと見ると、ルーカス氏が担当する事業部門の名称が最もふさわしいのではないか。

 「デジタル・エンタープライズ・プラットフォーム」――。この名称にこそ、HCPに対するSAPの大いなる野望が込められているのではないだろうか。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ