ニュース
» 2016年06月15日 11時14分 UPDATE

インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング:“FinTech法案”の陰で進む電子マネーの規制緩和に注目

仮想通貨を規制する法改正案が5月25日の参議院本会議で可決・成立。また、FinTech推進に向けて銀行のIT企業への出資規制を緩和する銀行法改正案も可決・成立した中、期待される日本のFinTech展開について考える。

[山崎秀夫,ITmedia]

この記事は山崎秀夫氏のブログ「インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング」より転載、編集しています。


「“フィンテック(FinTech)法案”が通過して、日本も仮想通貨を認めるんだって? じゃあ既存の電子マネーはどうなるの? 改正銀行法なども改正資金決済法もほとんど触れられていないんだけど@@」

――いやいや、仮想通貨を認める裏で行政が裁量で電子マネーの規制緩和を実行中なのですよ……

「えええ……法律も変えずにそんなのあり!?」

――「(金融庁)うるさいなあ……上意、上意であるぞお!!」とでも言っているのでしょうか?


 2016年5月25日、参議院本会議で与党などの賛成多数で“フィンテック法案”(改正銀行法案関連と改正資金決済法案)が可決されました。世にいう金融ビッグバンの再来です。1年以内に施行されます。

 改正銀行法では、金融機関のフィンテック企業への投資や設立、買収が個別認可で持ち株比率100%まで認められることになっています(従来は銀行5%、持ち株15%以内の出資の限定)。また金融機関の決済業務の範囲が拡大します。

 そして改正資金決済法では、ビットコイン型のような仮想通貨の取り扱いが一般事業会社にも認められています。

裏で進む電子マネーの規制緩和に注目

 筆者は、あるフィンテック関連のセミナーで、仮想通貨解禁の裏で進む電子マネーの大きな変化について話しました。(このあたりの見方は一般経済紙が全く取り上げていません。)

 特に「サーバ型電子マネー」に対する2010年の旧資金決済法上の規制は、いつの間にか行政指導により消え始めています。

電子マネーに対する縦割りの行政指導

Photo

 2010年の旧資金決済法の施行当時、eBay傘下のPayPalは、新たな資金決済法の下で日本に本格進出するという見方がありました。しかし実際には、PayPalは従来の個人間送金サービスを停止し、一般PayPal預金の銀行払い出しをも停止しました。旧資金決済法でがちがちの縦割り規制――為替取引、前払い式支払い手段(プリペイドカード、いわゆる電子マネー)、決済代行サービス(割賦販売法)などによる縦割りの壁――を前提とした金融庁の行政指導のおかげで、2010年の資金決済法施行後のPayPalは全く魅力もないサービスとなっていました。為替取引、前払い式支払い手段、決済代行サービスと銀行預金の取り扱いの間に壁がない自由な米国のPayPalと大違いでした。

 80年代の昔、総務省(当時の運輸省)が「放送」「通信」「情報処理」は全く別物だとする各サービスの間に壁を設ける縦割り行政指導を行っていたことを思い出します。金融庁のPayPalへの指導はこれとよく似ています。同じ省庁の中でも壁を作ります。

Line Payで崩れた縦割り行政の壁

 しかし2014年の2月、中国の春節でメッセージサービスのWechat(微信)が開始したお年玉の交換サービス(個人間送金を認めるWechatウォレット)が大ヒットし、アジアで競合するLineが金融庁に直訴してできたのがLine Payのサービスでした。

 Line Payを調査すればすぐ分かりますが、当初PayPalが課せられた制限はほとんど消えています。何しろ本人確認はLine Payに銀行口座を登録すれば、銀行側で本人確認が終わったと見なされるというすごい規制緩和です。

 2014年にはビットコイン取引所であったマウントゴックス(Mt.Gox)が倒産し、一方で欧米でフィンテックが盛り上がり、金融庁も自民党も規制緩和の検討を始めていた時期に当たります。

 資金決済法の改正なしに行われたLine Payに見る実質的な規制緩和は、金融庁は「アドバルーンとして様子を見ていた」と考えられます。

仮想通貨を認める一方、電子マネーに触れないわけ

Photo

 明らかに“フィンテック法案”をきっかけとして、日本型の電子マネーはSuicaPASMOnanacoWAONなどのストアードバリューカード方式(時代遅れのモノ支配論理)から、IoT型の「サーバ型電子マネー」(サービス支配論理)に移行すると予測されます。

 仮想通貨を認める一方、電子マネーの規制緩和を実施しないのは明らかにバランスを欠くと金融庁は判断したのでしょう。Line Payを唐突に認めたこともあり、資金決済法上の電子マネーに関してはほとんど手を付けることなく(今さら法改正できず)、規制緩和が進んでいます。

Yahoo!マネーに注目

 2016年夏に登場するYahoo! マネーがどれだけ米国流の電子マネーPayPalの使い勝手に近づくかが見ものです。これは“フィンテック法案”の裏で進む日本型の「サーバ型電子マネー」の成否、ひいてはECや越境ECの普及に影響します。またいずれにしても日本型の「ガラパゴス電子マネー」(Edy、Suica、PASMO、nanaco、WAON)などは次第に衰えていくでしょう。

 金融庁も、自らのプレゼンス(存在感)を維持するのに必死なのでしょう。

著者プロフィル:山崎秀夫

総合商社のIT子会社にてIT技術者を約20年経験。ロンドン勤務の後、大手総合研究所勤務を経て現在は日本ナレッジマネジメント学会専務理事。自我流の記号論やメディア論、社会心理学、進化系の人類学などによるネットコミュニティーの分析を得意とし、IoT、ウェアラブル、ソーシャルメディアなどを追いかけている。詳しいプロフィルはこちら


Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ