コレ1枚で分かる「クラウドの歴史的背景」即席!3分で分かるITトレンド(2/2 ページ)

» 2016年06月22日 07時00分 公開
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小型コンピュータの登場から“1人1台”の時代へ

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 1980年代、多くの小型コンピュータが出現しました。それが、オフィースコンピュータ(オフコン)、ミニコンピュータ(ミニコン)、エンジニアリングワークステーションと呼ばれるコンピュータです。高価なメインフレームに全てを頼っていた当時、そこまで高性能、高機能ではなくてもいいのでもっと安くて手軽に使えるコンピュータが欲しいという需要に応える形で、広く普及していきました。

 その後、これら小型コンピュータの性能も向上し、メインフレームで行っていたことを置き換えるようになるとともに、新しい業務を初めからこれらの小型コンピュータで開発、あるいは市販のパッケージソフトウェアを使って利用するという流れが生まれてきたのです。これが、世にいう「ダウンサイジング」です。

 また、時を前後してパーソナルコンピュータ(PC)も登場します。「アップル」「タンディ・ラジオシャック」「コモドール」といったいわゆるPC御三家が、その名前の通り、個人が趣味で使うコンピュータとして登場します。その後、1981年IBMが「Personal Computer model 5150(通称IBM PC)」を発売するに至り、ビジネスでのPC利用が一気に加速しました。

 ただ、さまざまな小型コンピュータの出現は、技術標準の乱立を招き、S/360出現以前と同様の混乱を招いたのです。この事態を大きく変えるきっかけとなったのが、IBM PCでした。IBMのブランド力により、PCへの信頼が高まり、ビジネスでの利用が広がったこと、そして互換機の出現により、コストが大きく下がったことが理由です。

 PCでは後発だったIBMは、開発を急ぐために、市販の部品を使い、技術を公開して他社に周辺機器やアプリケーションソフトを作ってもらうという戦略を採用しました。コンピュータの中核であるプロセッサ(CPU)をIntelから、また、オペレーティングシステム(OS)をMicrosoftから調達したのです。

 一方で、Intelは自社のCPUの技術仕様を「インテルアーキテクチャ(IA:Intel Architecture)」として公開、CPU以外でコンピュータを構成するために必要な周辺のLSIや、それらを搭載するプリント基板であるマザーボードなどをセットで提供し始めました。

 さらに、Microsoftも独自に、このIntel製品の上で動作する基本ソフトウェア(OS:Operating System)であるMS-DOS、さらにはその後継である「Windows」を販売するようになりました。

 その結果、IBMでなくてもIBM PCを製造できるようになったのです。IBM互換PCの誕生です。価格が安く、本家のIBM PCと同じ周辺機器を使え、同じアプリケーションソフトが動作する互換PCは広く支持され、一気にコモディティ化し、ユーザーの裾野が大きく広がったのです。

 こうしてIBM PC互換機は市場を制覇しました。現在のWindows PCです。ところが皮肉なことに、互換機に市場を奪われたIBM自身のPC関連の売上は伸び悩み、コモディティ化によって利益率も悪化しました。その結果、ついにPC事業を他社に売却してしまうことになったのです。

 そんなPC市場の拡大に後押しされ、Intelはより高性能なCPUを開発するとともに、Microsoftは、個人が使用することを前提としたOSを拡張して、複数のユーザーが同時に使用することを前提としたサーバOSを開発するに至り、コンピュータ市場はMicrosoftのOSであるWindowsとIntel CPUとの組み合せ、世にいう「Wintel」の時代へと動き始めたのです。

 その結果、それまで乱立していたアーキテクチャはWintelに収束し、さらなる技術の進化と大量生産によって、コンピュータの調達に必要なコスト(TCA:Total Cost of Acquisition)は、大幅に下がっていったのです。1990年代も半ば頃になるとPCは1人1台、1社でメインフレームや多数のサーバを所有する時代を向かえたのです。

TCOの上昇とクラウドのニーズ

 TCAの低下とともに、コンピュータは一つの企業に大量に導入されるようになりました。その結果、コンピュータを置く設備やスペース、ソフトウェアの導入やバージョンアップ、トラブル対応、ネットワークの接続、バックアップ、セキュリティ対策など、所有することに伴う維持、管理のコスト(TCO:Total Cost of Ownership)が大幅に上昇することになりました。その金額は、IT予算の6〜7割に達するまでになってしまったのです。この事態に対処しなければなりません。そんなニーズの高まりの中に、クラウドが登場したのです。

Photo 【図解】コレ1枚で分かる「クラウドへの期待の歴史的背景」

著者プロフィル:斎藤昌義

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 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら


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