富士通とOracleが提携、クラウド導入の壁を崩せるかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年07月11日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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Oracleとの提携スキームで富士通の深謀遠慮も

 山本氏は今回の提携の狙いについて、「エンタープライズ領域におけるクラウド事業の強化」と「Oracle製品を利用中のお客さまのクラウド移行ニーズへの対応」を挙げ、「両社の強みを生かしてお客さまのクラウドファーストニーズに対応していきたい」と強調した(図参照)。そのための両社の提携スキームは先に述べた通りだが、富士通にとっては深謀遠慮のスキームではないかと推察する。

 というのは、富士通はかつて米Microsoftとの間でクラウドサービスの提供形態をめぐって揺れ動いた経緯があるからだ。富士通はMicrosoftの「Microsoft Azure」をベースとしたIaaS型サービス「FUJITSU Cloud Service A5」(以下、A5)を現在提供している。これは、日本マイクロソフトの国内データセンターから供給を受けて付加価値サービスを提供しているものだが、実は2011年8月のサービス開始からしばらくは富士通の国内データセンターで運営していた。

 Microsoftがクラウドサービスの運営を外部委託した初めてのケースだったが、結局は日本マイクロソフトが国内データセンターを開設した段階で現在のスキームになった。これには、Azureの事業規模拡大に伴う経済性の追求やスピーディな技術革新などを重視して自ら運営を行う方針を打ち出したMicrosoftに、富士通が同意せざるを得なかった背景があったようだ。だが、それを契機に富士通は、クラウドサービス事業の戦略転換を迫られる格好となった。

 こうした経緯が、今回のOracleとの提携に何らかの影響を及ぼしていることはないか。会見の質疑応答でA5との違いをあえて聞いたところ、富士通の香川進吾執行役員専務デジタルサービス部門長兼CTOが、A5には直接触れず、次のように答えた。

 「今回の新サービスはK5とOracle Cloudを連携させた形と、Oracle Cloudの名称をそのままに富士通がインテグレーションを施す形の2通りがあり、いずれもオンプレミスでOracleデータベースを利用されている多くのお客さまからのご要望に応えたものだ。クラウドサービスに対するお客さまのニーズはかなり多様化してきており、富士通が前面に立って対応する形がお客さまにとって最も安心していただけるのではないかと考えた」

 一方のOracleには、クラウドサービスの国内でのデータセンター拠点をほかに設ける考えはあるか、聞いてみた。これについては、日本オラクルの杉原博茂社長兼CEOが次のように答えた。

 「当社の事業に対する姿勢は全てオープンなので、クラウドサービスに対するお客さまのニーズがどんどん高まってくれば、さまざまな提供形態を考える必要も出てくるかもしれない。ただ、今回の提携はOracleデータベースを利用されている多くのお客さまからのご要望に応えたもので、まずは両社でそうしたニーズにしっかりと対応していきたい」

Photo 左から、富士通の山本会長、香川進吾執行役員専務デジタルサービス部門長兼CTO、阪井洋之執行役員常務グローバルマーケティング部門長、日本オラクルの杉原博茂取締役 代表執行役社長兼CEO、高橋正登執行役員クラウド事業戦略室長兼エンタープライズソリューション統括

 香川氏も杉原氏も「多くのお客さまからのご要望に応えて」と口をそろえて語ったのが印象的だった。

 少々、提携スキームの話に執着したが、今回、両社が打ち出したクラウドサービスの新形態によって、オンプレミスのエンタープライズシステムがクラウドへ移行する動きが活発化するか、注目したいところだ。この点について、エリソン氏がこんな見解を述べていた。

 「今回の両社の提携によって、オンプレミスでカスタマイズしたシステムを利用しているケースが多い日本の企業もクラウドへ移行する動きが本格化するだろう。それは、日本にとって大きな変革につながるはずだ」

 今回の両社の提携は、その使命を担っている。

Photo 富士通とOracle両社の戦略的提携の目的と強み
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