どうやら、想定よりもハードルを下げて説明したほうがよさそうだ。気を取り直して「Excelは表計算ソフトの一種」ということを説明し、
わたし: 「=2/4」って入力したら、この式の答えである0.5が出てくるでしょ? これが計算式。「=」で始めたら計算式だって自動で認識してくれるの。でも、「=」を入力せずに「2/4」って入れたら、ほら「2月4日」になるんだよ。この場合は、計算式だって認識されていないわけ。
と説明したら、「おぉ〜」と感動する新入社員と、そんなこと知ってまーす、という雰囲気の新入社員とに見事に分かれた。新入社員のITリテラシーは低い、とひとくくりにした自分に反省。彼らの知識レベルは、随分とバラつきがあるようだ。その後私は、頭が真っ白になりそうなくらい研修室中を走り回る羽目になった。結局、前の新入社員研修のときからあまり進化していない……。
この話を思い出してて気付いたんだけど、新入社員の中でITリテラシーの高い人に私の「助手」になってもらって、ITリテラシーの高くない人たちに教える、ということを手伝ってもらえばよかったかも。えーん、でも後の祭り。
その後は計算式の応用ということで、関数の話に講義が進んだが、さらなる事件が起きた。
新入社員: 関数って、全部覚えなくても使いたいときにググればいいですよね?
わたし: え? ……まぁダメとは言わないけれど。覚えられない?
新入社員: 調べて出てくるなら、覚える必要はないんじゃないかと思うんです。
言われてみればそうだな……ん? 私が言いくるめられてどうする。
確かに、めったに使わないような関数はその都度調べて使う、ということはよくある。でも、よく使う関数の使い方をいつも調べるようでは効率が悪い。それに、仕事のやりかた、仕事で使うツールの使い方を「覚える」のも新入社員の仕事のうちだと思うのよね。
配属されてから最初のうちは、既に作られているフォーマットにデータを入力するような仕事が多いだろうから、問題は少ないかもしれない。でも、将来書類を作る立場になるとそうはいかない。Excelのワザを多数紹介する本がよく売れているのも、それだけニーズがあるということだ(ということは、世間の人はやはり覚えていないのか?)。
分からないことを調べる、というのは決して悪いことではないし、調べる力があるとか、調べるためのリソースをたくさん知っていることも立派な武器だ。けれど、たくさん経験して覚えて、正解がないような場面でも、たくさん応用できるようになってほしい。うーん、それをうまく説明できないなぁ。結局、質問してきた新入社員に答えられたのは、次の一言だけだった。
わたし: でも仕事のやり方は、ググっても出てこないから覚えてね……。
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