一般的に、企業の資産は「ヒト(ビジネス)・モノ・カネ」の3つの観点で構成されます。
3つの観点をITシステムのレベルに掘り下げると、具体的には次のような課題への対応が必要になります(下表参照)。
例えば、カネ観点における「導入・運用コスト低減」の課題では、年々低下するストレージのコストに着目します。その低下率を容量あたりの単価(1Gバイトあたりとした場合)でみると、一般的なHDDは数%から十数%、オールフラッシュストレージ装置では数十%にもなります。また、オールフラッシュストレージ装置の性能単価(IOPS)は、既にHDDの10分の1から20分の1と、既に逆転しています。新しい製品や技術を簡単に採用できることがROIやTCOに直結するというわけです。
これ加え、近年は「ヒト・モノ・データ」と、「情報そのものが資産である」というように価値が変わってきました。日々発生する情報自体に価値があるということです。例えば、膨大なデータ(実績)から次のトレンドを見つけるビッグデータ解析、最適な方式を類推、演繹するプロフェッショナルシステムや人工知能(AI)があります。
では、具体的なITシステムの改善策として何をすればよいのでしょうか。業務自体はパッケージの採用で業界的な標準化に合わせるという対処療法があるものの、実業に関連することから、最終的には実務に合わせるしかありません。IT部門から提案を出すとしても、実際のユーザーである事業部門の担当者の業務課題とマッチしているかどうかのすり合わせが非常に難しいからです。
この点には、DevOps的な考え方を活用できます。開発側と利用側がより積極的にコミュニケーションを図り、同じ会社の仲間として協力しながらシステムを作り、使うことが必要です。クラウドが一般的になったおかげで、さまざまなベストプラクティスが生まれていますが、具体的には次の点に着目するとよいでしょう。
(1)できるだけ自動化を実現すること
社内手続きなども含めて、管理や安全のためにどうしても必要なもの以外はできるだけ省きます。「これは難しい」とか「なくなると心配」といった点は横に置いて、まずはフラットに検討を開始することが肝要です。
(2)最初から完全なモノを求めないこと
マイクロサービス化など、できるところから手を付けます。重要なことに注力するのは必要ですが、時間がかかることと、できることとのバランスこそ、ステークホルダーマネジメントとしてIT部門の調整力が発揮されます。
(3)失敗は起こり得るものとし、修正対応すること
これは「失敗してよい」ということではなく、失敗してもチームとして前向きに修正へ取り組むことを許容するということです。結果的により早く正常に、かつ簡便なシステムを実現します。もちろん失敗しない方が良いですし、また、業務システムのクリティカルパス(問題が起きると全体に大きな影響を与えるもの)については、きちんとしたリスクの検討と事前の対策が必要です。
先に挙げた課題のうち、以下の点の解決を大きな目標に設定することで、より具体的な検討ができます。
ただし、これを実現するためには、業務部門とIT部門の間で相互理解が必要で、最近では、人材交流としてIT管理者を業務部門に異動・所属させ、現場で直接日々の運用を実感しながら他のメンバーとともに改善策を洗い出すといった運用をしている企業も出てきました。
言ってみれば企業文化の変更ですので、IT部門が経営層や業務部門に対して、「このプロセスが良いです、安心して進められます」と説明しても、一筋縄ではいかない場合があります。例えば人材交流にしても、製造業やIT関連産業であれば現場側も技術者であることが多く、受け入れは比較的容易です。一方、流通やサービス業では、現場側は完全にITの利用者でしかなく、考え方一つをとっても、IT部門にはなかなかなじみにくいという話しも聞きます。その結果、異動してもシステム的なことに十分な時間を割けられなかったり、そもそも職種の違いから業務部門側で難色を示されたりする場合もあります。
本来はここに挙げた運用の変更を優先させることで、より効率的に進めることができるでしょう。どうしても難しい場合は、IT部門として手が付けられるところから始めることになります。では、仮に業務部門との調整が難しくてもIT部門だけで手が付けられるところだったとして、もう一方の「データ」の管理手法の標準化、効率化の方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
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