電話に出られない新人、それってスマホのせい?女子ヘルプデスク今昔物語 第8話(3/3 ページ)

» 2016年08月05日 08時00分 公開
[鐙貴絵ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

イマドキの人は家の電話を使わない?

わたし: えーと、Mくんは一人暮らしだっけ?

Mくん: いえ。家族と同居です。

わたし: じゃあ、家の電話に出たことある?

Mくん: いや、ないですね。

わたし: え! 皆さん、家の電話に出たことある?

 なるほど……。どうやら多くの人は、自宅に固定電話はあるものの、ほとんど鳴らない。実際には、まさに「1人に1台」携帯電話があるので、電話はダイレクトに本人にかかってくる。たまに家の固定電話に着信があっても、それは親に用事があるケースがほとんどだから、親が出るとのことだ。

 今は携帯電話も固定電話も、相手の名前や電話番号がディスプレイに表示されるから、相手の名前を聞いたり、こちらから名乗ったりすることがほとんどないという。敬語を使うシーンもほとんどない。アルバイトなどでしごかれた(?)経験のある一部の人を除いて、学生時代に正しい敬語を鍛える機会がない。これは盲点だった……。

photo 子供のころから1人に1台電話があれば、確かに取り次ぎをする機会は激減する。これは盲点だった……

 身内は呼び捨てにする、というのは前半のレクチャーで伝えたから何とかなったものの、より丁寧に言おうとして、身内に「お帰りになられました」というような敬語を使う。しかも二重敬語。方角や選択肢を示す場面ではないときに「ほう」と言ってしまうのも、時代なのかしら。

 と言ってしまえばそれまでなんだけれど、会社の電話はそういうわけにもいかない。ビジネスにおける「妥当な言葉遣い」はほとんど変わっていないもの。まして、会社の電話に出た人は、その会社を代表して電話に出るようなもの。電話の印象は、そのまま会社の印象に直結する。これは、どうしたものかしら? 敬語の使い方やよく使うフレーズがさっと出てくるようにするには……。

 しばし考える。しかし、いつまでも新入社員を待たせるわけにもいかない。ようやく動き出した脳みそで思い付いたのは、よく使うフレーズを繰り返し言わせることだった。学生時代に英語の授業でよくあった「Repeat after me.」だ。

 まずはよく使うフレーズの言い回しを、型から覚えていってもらうしかない。電話を使うシーンをいくつかに切り分けて、ステップごとに練習を進めていった。ついでにメモを取るクセ、いや、メモを取るコツを伝授し、活用してもらえるようにした。

 新人には早く電話応対を身に付けてもらい、実践してほしい。なぜなら、会社にかかってくる電話に出ることは、仕事を覚えること、お客さまを覚えること、仕事仲間を覚えることにつながるからだ。また、知らない専門用語に気付けるというメリットもある。

新入社員: すみません。質問いいですか?

わたし: はい、どうぞ。

新入社員: 「電話を切るときはフックを押してから受話器を置く」ってありますけど、会社支給の携帯電話の場合はフックがありませんよね。その場合は、どうやって電話を切ったらいいんですか?

わたし: フックがない電話機を使った場合は普通に切っていいのよ。

新入社員: じゃあ、テキストにそういう例外も入れておいてほしいですね。

わたし: そ……そうね……。

 やっぱり、マニュアル世代なのかしら…。それも書かないとダメですか?

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ