コンピュータの計算能力が飛躍的に向上したことで、大量のデータを高速で処理することが可能になりました。機械学習は、知識やルールの元となるデータが大量であるほど、能力を発揮します。そのためには、大量のデータを高速かつ効率よく処理する計算能力が必要です。その能力が、機械学習の実用化を可能にするほど十分なレベルに達しつつあります。
特にGPU(Graphic Processing Unit)の性能向上は、機械学習の実用化に大きく貢献しています。GPUとは、もともと画像処理のために開発された専用プロセッサ(コンピュータにおいて計算を実行する中核的な装置)でした。その特徴である「大規模並列処理(同時に複数の計算処理を行うこと)」能力の高さがディープラーニングなどの機械学習に適していることから、この分野で広く使われるようになり、今では機械学習に特化した機能なども加えられ、性能をさらに進化させています。
1990年代の初めごろから使われはじめたインターネットにより、世界中がネットワークでつながる時代を迎えました。このインターネットを土台にして、Webサイトが広く公開されるようになり、世界規模でさまざまな情報が発信されるようになったのです。
さらに、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディア、スマートフォンやウェアラブルなどの普及により、データを生み出す仕組みが急拡大します。そして、モノにセンサーや通信機能が組み込まれインターネットにデータを送り出す仕組みであるIoT(Internet of Things:モノのインターネット)が広がりを見せ始める中、大量のデータ(Big Data:ビッグデータ)を集めやすい環境が整いつつあります。
先に述べたように機械学習はデータが大量であればあるほど、性能を高めていきます。ビッグデータによって、そのデータが集めやすい状況となったのです。ソーシャルメディア、スマートフォンやウェアラブル、IoTなどに加え、データを生み出す仕組みは今後もますます拡大してくことが予想され、その中で機械学習はさらに能力を高めていくでしょう。
一方、データが大量に集まるようになったからこそ、これまでのアルゴリズムだけでは、データにどのような規則性や相互関係があるかを見つけることが難しくなったという面もあります。それを見つけ出す手段としても、機械学習は期待されています。
現時点では「ダートマスで掲げられた理想が実現された」と言い切れるほど人工知能が進化したとはいえませんが、「アルゴリズムの革新」「計算能力の飛躍的向上」「ビッグデータの利用」といったIT環境のおかげで確実にその能力を高めつつあります。画像処理や音声認識といった特定の知的能力においては、人工知能は既に人間の能力を超えるほどの性能を見せ、実用化への取り組みも急速に拡大を見せています。
日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。詳しいプロフィルはこちら。最新テクノロジーやビジネスの動向をまとめたプレゼンテーションデータをロイヤルティーフリーで提供する「ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー/LiBRA」はこちら。
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