第31回 「ポケモンGO」まで来たITの進化とその先にあるIoTの衝撃日本型セキュリティの現実と理想(2/3 ページ)

» 2016年09月15日 08時00分 公開
[武田一城ITmedia]

IoTとビッグデータの関係

 IoTは、現在のITで非常に騒がれている分野の1つに間違いない。そして、その前に騒がれていたのはビッグデータという分野だった。この2つは一見すると全く別のことを論じている。しかし、この2つの分野が実現すると述べている将来像は意外なまでに一致している。理由は後で述べるが、このIoTとビッグデータという2つのワードがそれぞれ目指すところは、ほとんど変わらない。まさに、表裏一体の関係にあるといってもいいだろう。

 社会構造に変革をもたらす方法としてみると、ビッグデータは収集したデータの解析で価値を生むことをテーマとしている。IoTは、価値を生むためのデータを人間が入力したものだけでなく、センサやさまざまな機器からどのようにして収集するのかをテーマにしている。

 つまり、両者は情報活用のサイクルを構成する新しいプロセスの必要性を述べたものであり、フォーカスする箇所が少しだけ違うだけに過ぎない。ビッグデータとIoTはそれ以外に大筋では大きな違いはない。両者は、データを効率的に収集しそれを解析することで新しい価値を生む仕組みをめざすという見事に一致した目的を持っていたのだ。

 IoTとビッグデータは、どちらも情報活用の範囲を飛躍的に拡大させることをめざしている。これが実現すれば、従来のITによる情報活用では手が付けられなかった現実世界に、その適用範囲を拡大できるのだ。

IoTとビッグデータ

ITの進化とポケモンGOの出現

 Windows 95が発売され、インターネット時代が本格的に幕を開けた1990年代半ばから現在までの約20年間に、人々を取り巻く環境は大きく変わった。ビジネスでは、PCやインターネットの全く関わらない業務や業態がほとんどなくなり、システムやインターネットが停止すると、企業活動そのものがストップしかねない業種・業態も珍しくない。

 プライベートでのIT利用は、ビジネス以上に人と密接に関わるようになってきている。若い世代を中心にスマートフォンを片時も離さない人たちがいる。世界とネットワークを通じて常時接続させていることが当たり前となり、その結果スマートフォンなどで提供されるゲームやSNSなどのサービス依存症が珍しくない世の中にもなった。

 当初は先進的な仕組みに思えたクラウドコンピューティングも、企業利用よりコンシューマ利用の方が活発だ。スケジュール管理やメール、GPSによる位置情報を使った道案内、クラウド上のストレージなど、既にあらゆるサービスが無数に提供されている。コンピュータやシステムに関わっていない一般の人々が主役となって、日常的にこれらを利用する時代だ。

 そして、最近ではとうとう「Pokemon GO」(以下、ポケモンGO)のような人間の日常の行動を変えるサービスも開始され、それが世界中で爆発的にヒットしている。これを、たかがスマートフォンのゲームと侮ってはいけない。ゲームでありながら人々の行動パターンや移動の動線を変えることに成功した。これまでマスコミや広告などのメディアが長年かけても、なかなか実現できなかった「人の行動を変える」という途方もないことを、たった一つのゲームやすやすとやってのけたのだ。

 このような仕組みが人間の生活とより深く融合すれば、スマートフォンがかつてそうだったように、ほんの数年間で世の中を劇的に変えることになる。ポケモンGOの爆発的なブームはゲームに留まらず、その後の世の中にとって変革になる大きなターニングポイントだった――未来のことなので予測でしかないが、未来の人は現在を振り返ってこんなことを言うかもしれない。

※「ポケモン」「ポケモン GO」は、任天堂株式会社の商標または登録商標です。

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