実際に高校で行った授業では、IoTを使ったアイデアを出しやすくするために、数人で班を作り、1つのモノに着目してどのようなセンサーを使えるかを考えるワークショップを行った。
授業の中では「自動車に指紋センサーをつけ、自動的にロックがかかるようにする」「コップの中にアルコールを検知するセンサーを仕込み、アルコール常飲者に警告を出す」など、さまざまなアイデアが出たそうだ。特に後者のアイデアは、依存症防止という社会的価値を生み出す可能性もあり、アシスタントで来ていたIBMの社員も思わずうなったという。
授業後に行ったアンケートでは、IoTの理解促進に加えて、半数以上の生徒が「アプリ開発が容易になっていること」に驚き、「これからの社会ではアイデアが重要であること」をあらためて実感していたという。高校生にとって、アプリを作るという体験は新鮮かつ面白いことに映ったようだ。和田さんも「アプリというのは意外と簡単に作れる、と思ってもらうことも授業の狙いです」と話す。
「生徒の中には、アイデア出しが得意な生徒やアプリ開発が得意な生徒がいるなど、それぞれで関心のある分野は異なることが多い。グループでアプリ開発に取り組むことで、お互いに得意分野で協力、コラボレーションすることが大切だというメッセージを伝えていきたい」(藤川大祐さん)
今後はIBMと企業教育研究会が共同でこの出張授業を宣伝し、体験する中学や高校を募集するとのことだ。2016年度内に5校で授業を実施するのが目標で、プログラムや教材も改善していく。2コマ分と短くまとめたことで、さまざまな学校で展開することが容易になるそうだ。
近年はIT人材育成の重要性が高まり、小学校でもプログラミング教育の必修化が検討されている。ビジネスの現場でも、IoTを前提としたモノの考え方が重要になっているのは言うまでもない。「IoTネイティブ」な学生が社会に出るのも、そう遠くない話なのだろう。
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