国内企業のIoT利用率は5.4%、企業間連携が普及のカギに?『ビジネス2.0』の視点

IDCがIoTに対する国内企業の動向を調査したレポートを発表。IoTに取り組んでいる企業はの割合は、前年の調査から増えているものの、必ずしも高いとはいえない。今後は企業を超えた連携がIoT普及のカギを握るという。

» 2016年09月15日 08時00分 公開
[林雅之ITmedia]

この記事は林雅之氏のブログ「『ビジネス2.0』の視点」より転載、編集しています。


 2016年はIoT元年に――。そう話す人が少なくないですが、「本格的な普及はこれから」と思わせる調査結果が出ています。

 調査会社のIDC Japanは9月13日、「国内IoT市場 企業ユーザー動向調査結果」を発表しました。国内企業のIoT利用率は5.4%で前年の調査から0.5ポイント増え、大手の製造業を中心に、IoTの利用率は着実に向上し、各産業分野でもIoTに対する認知度は高まっているとしています。

 同社では、IoT利用企業の産業分野を「製造/資源セクター」「流通/サービスセクター」「公共/インフラセクター」「金融セクター」の4つに分類。IoTの利用率が最も高いのは「製造/資源セクター」で利用率は8.5%。「流通/サービスセクター」が3.2%、「公共/インフラセクター」が4.0%、「金融セクター」が3.5%となっています。

 自社内の業務効率化/コスト削減を目的とした「社内用途」のIoTが全体の8割以上を占めている状況ですが、社外顧客へのサービス付加価値向上/新ビジネス創出を目的とする「社外用途」も徐々に広がりつつあります。

photo IDC Japan 国内IoT市場 企業ユーザー動向調査結果

 今後、IoTの導入が本格化するには、現在主流となっている業務効率化から、付加価値向上や新しいビジネス創出に対するアプローチが重要となるでしょう。

 IoTの導入/運用窓口については、事業部門の割合(約46%)がIT部門の割合(約32%)を上回る結果となっています。IDCは、事業部門主体のIoTビジネスの加速に伴い、各産業分野に強みを持つ非IT事業者と企業の事業部門が密に連携し、新たなIoTのユースケースを創出するようなケースが増えていくと予測しています。

 一方、社内の業務効率化や費用削減目的でIoTを利用する企業における課題として、費用対効果の明確化の難しさ、セキュリティ懸念、技術力不足、人材育成の遅れなどを挙げています。また、付加価値向上や新しいビジネス創出など社外用途で利用する企業では、IoTによる事業競争力のさらなる強化や、新規顧客開拓に向けて試行錯誤する取り組みが見られるとしているとしています。

 IoTへの注目度は急速に高まっているものの、現状では5.4%と必ずしも高い数値とはいえません。現状では、業務の効率化やコスト削減などが中心となっていますが、デジタルトランスフォーメーションの流れが期待されるなかで、付加価値向上や新しいビジネス創造など、攻めの経営にIoTを活用できるかが、企業の競争力を高めていく上で重要となっていくでしょう。

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