顔認識技術のダークサイド(2/3 ページ)

» 2016年09月24日 08時00分 公開
[Kaspersky Daily]

3.人々を監視する企業

 企業はFBIよりもはるかに大規模な顔画像データベースを持っています。その筆頭を飾るのはFacebook、Instagram(Facebook傘下)、Google(およびGoogle+)、VC.comといったSNSサイトです。こうした企業は独自の顔認識ソリューションを持ち、常に開発、改良に取り組んでいるところがほとんどです。

 MicrosoftはFamilyNotesアプリ用に同じような技術を開発中です(英語記事)。ノートPCやタブレットに内蔵されたカメラを使用してアプリがユーザーを識別できるようにする技術です。Microsoftは世界有数のOS開発企業であり、FamilyNotesは同社の顔画像データベースを大いに補強することになるでしょう。

 Facebookの顔認識システムは世界トップクラスの精度を誇るシステムです。このツールは2012年にひっそりと提供開始となり(英語記事)、既定で有効になっているユーザーがほとんどでした。その後、Facebookは訴訟をいくつも経験し(訴訟の件数は現在も増加中)、Googleも同様の申し立てにより提訴されています(リンク先はいずれも英語記事)。その結果、Facebookは一部の地域で顔認識機能を無効にせざるを得なくなりました(英語記事)。

 この問題に対して、Facebookが一方的な対応をしていることも指摘しておくべきでしょう。例えば、同社のナレッジベースには顔認識機能を無効にする方法についての記事が1つもありません。ちなみに、1回クリックしただけでは、無効にすることができません(英語記事)。

 SNSに登録していない人(または、自分の本当の姿が映った写真をSNSにアップロードしないようにしている人)でも、顔写真がSNS運営会社のデータベースに追加される可能性があります。2015年にシカゴ在住の男性が、フォトブックサービスShutterflyを提訴しました(英語記事)。自分の写真が無断で同社のデータベースに追加されたということです。第三者(おそらく、友人の誰か)がこの男性の写真をShutterflyにアップロードしてタグ付けしていたのです。

4.誰でもあなたを見つけられる

 誰もが利用できる顔認識システムがあれば、いわゆる「私刑」、つまり私的制裁の強力なツールとして利用される恐れがあります。例えば2016年に、サンクトペテルブルグで2人の若い男が建物のロビーに放火する事件がありました。2人は犯行後、同じ建物のエレベーター内で興奮して大騒ぎし、エレベーターや近隣に設置された監視カメラにその様子が記録されていました。

 地元の警察が刑事事件として立件しようとしなかったため、その建物の入居者たちは自らの手で事件を追うことにしました。犯人の顔が映ったスクリーンショットを撮影し、FindFaceを使ってSNSで2人を見つけたのです。

 入居者たちはその結果を警察に届け出て、結局犯人は告発されました。Ren TV(ロシアのテレビチャンネル)の報道によると、入居者の1人は、十分なデータと証拠が集まり、犯人の友人や学校、職場にメッセージを送ることができるほどだと語っています。

 この入居者たちは警察に後を委ねる忍耐力を持ち合わせていましたが、全てのインターネットユーザーがこのように穏健な対応ができるわけではありません。そして、人を傷つける意志があるところには、その方法が存在するものです。FindFaceについて聞いたことがある人なら、世間の不評を買った事例をご存じでしょう。匿名画像掲示板のユーザーがFindFaceを使ってポルノ女優の身元をオンラインで特定したという話です。ネット荒らしたちは女性のSNSページを探し、女性の友人や身内あてに画像を添えて暴露メッセージを送りつけました。

 他方で、FindFaceの創業者マクシム・ペルリン(Maxim Perlin)氏は、今の人々はプライバシーを守るために文字通りお金を払わなければならない考えています(ロシア語記事)。テレビのインタビューで同氏は、FindFaceのデータベースから自分のデータを消去してほしいという人は、お金を払って有料アカウントに登録する必要があると述べました。FindFaceでプライバシーを守るサービスの料金は月額約8ドルです。

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