「AWSの支払いはこれで」――クラウドの普及でクレカ業界に新たなチャンス?週末エンプラこぼれ話(2/3 ページ)

» 2016年09月30日 08時00分 公開
[やつづかえりITmedia]

 もう1つは、コンプライアンス意識の高まりだ。東証マザーズを始めとする新興市場の活性化によりIPOを意識する会社も多い。会計士の指導で会社の経理をきちんとしようとしたときに、いつまでも経営者個人のカードで経費の支払いをしているのは望ましくないと考える会社が増えてきている。

 「いわゆる法人カードを作ろうとすると、与信審査のために会社の登記簿のほかに2期分の決算内容の申告が必要です。大企業、あるいは中小企業でも既に成長した会社であれば良いのですが、クラウドサービスを使ってこれからいろいろなサービスをやっていこうという投資段階の会社は、当然赤字ですよね。従来通りの審査では、カードを発行できないという結論になってしまうんです」(磯部さん)

黒字化前の企業でも作れるビジネス用カード

 そういうケースの“突破法”としてクレディセゾンが勧めているのが、「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」だ。法人向けクレジットカードではあるものの、法人ではなく、個人の審査で作ることができる。

 招待を受けなければ作れないアメックスの「プラチナカード」とほぼ同様のサービスに加えて、決済口座として法人名義の口座が指定できるスモールビジネス向けのカードで、企業向け会計ソフトを展開するベンチャー大手や、既に上場を果たしたデータ分析サービスを提供するベンチャーなども、かつては同じ課題を抱え、同カードを利用していたという。

photo セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード。旧来からあったカードだが、ここ2〜3年でユーザーが一気に増えているという

 このカード自体は旧来からあったものだが、以前は同社の中でも注目度が高いとはいえない存在だった。ベンチャー向けのニーズに気付いた2年ほど前に、与信審査の方法を変え、会社の規模に合った限度額を設定できるようにし、記事冒頭のようなトラブルを回避できるようにしたのだ。

 「法人ではなく個人の審査ということで、コーポレートカードよりは作りやすいのですが、例えばその方が4〜5年前は学生でクレジットカードの利用実績がなかったり、うっかり払い忘れていたりなどで、未払いの記録が残っていたというケースもあるんですね。これまでのルールだと、その時点でカードの発行が難しくなってしまうのですが、今だとそういう場合は個別に調整します。

 そして私がヒアリングし、会社の将来性を判断して『大丈夫だ』と太鼓判を押すんです。例えばAWSの支払いに必要という話であれば、サービスが成長している証拠ですから、分かりやすいですよね。それから、ベンチャーキャピタルから出資を受けているというような事実があれば、それは成長性や運営体制に“お墨付き”を得ているようなものなので判断の好材料となります。従来の審査よりも実情に合っているといえるでしょう」(磯部氏)

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