トレンド機能で武装した「SAP HANA 2」、“次世代IT活用基盤”として定着するかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2016年12月12日 13時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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33万5000社のSAP顧客がHANAのポテンシャルに

 さて、最新版のHANA 2は従来のHANAからどこが機能強化されたのか。

 まず、データベース管理機能が改善されている。高可用性、セキュリティ、ワークロード管理、運用管理の強化により、企業にとっては事業継続性を確保できるようになるという。また、企業モデリング、データ統合、データ品質、階層ストレージといったデータ管理の拡張により、企業は保管場所にかかわらず、データを柔軟に利用できるようになるとしている。

 さらに、テキストデータ、地理空間情報データ、グラフデータ、ストリーミングデータの分析処理エンジンを拡張したことにより、開発者は高度なインサイトをアプリケーションに組み込むことができる。加えて、アプリケーションサーバや開発ツール、および言語のための拡張機能を利用して、次世代アプリケーションを構築・展開できるとしている。

 こうした機能強化とともに、HANA 2では開発者向けに無償版「express edition」も近日中に提供開始される。

 もう1つ、SAPは今回のHANA 2の市場投入を機に、HANAを基盤とするクラウドベースのマイクロサービスを利用することで、シンプルなAPIとさまざまな言語や開発プラットフォームを用いて、分析インサイトを取り込みながらアプリケーションの拡張を図ることができるようにした。HANA 2もさることながら、このマイクロサービスの提供も注目点の1つである。

 このように進化を遂げつつあるHANAだが、最近の勢いはどうなのか。SAPでは2015年末の段階で導入実績がグローバルで1万社を超えたことを明らかにしているが、それ以降、導入実績を公表していない。

 筆者の記憶では、SAPジャパンの福田譲社長が2015年8月の記者会見で、「HANAの導入実績はグローバルでおよそ7200社。過去1年間で倍増した。このうち日本はおよそ200社だが、これから加速する手応えを強く感じている」と語っていた。その後の勢いはどうか、大いに注目していた。

 HANAについては、IBM、HPE、富士通、NEC、日立製作所といったエンタープライズベンダーがこぞってビジネスパートナーとして名を連ね、AmazonやMicrosoftなどの有力なクラウドサービスでも利用できることから、2016年も倍増ペースかどうかは分からないが、相当な勢いで導入実績を増やしたとみられる。

 鈴木氏によると、「HANAの直近の導入実績は公表していないが、2016年は導入する業界も大きく広がり、新たなシステムだけでなく既存システムをモダナイズする際に適用されるケースも増えてきた。HANAが企業システムのイノベーションを推進していることを強く実感している」という。

 ちなみに、SAPの製品・サービスは190カ国に及ぶ約33万5000社に利用されている。HANAのポテンシャルは自社ユーザーだけでもこれだけある。果たしてエンタープライズプラットフォームとして定着するか。それを知らしめるためにも、今後、導入実績が節目を迎えた際にはぜひとも公表してもらいたいものである。

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