AIの「よくある誤解」10個、ガートナーが見解(2/2 ページ)

» 2016年12月22日 17時22分 公開
[ITmedia]
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 同社は先に挙げた10の「よくある誤解」のうち、特に多くみられるという2つについて次のように解説している。


誤解1:すごく賢いAIが既に存在する

 明確にしておくべきことは、「現時点において世の中には本物のAIと呼べるものは存在しない」という事実。AIをまともに研究している人は、現時点において「人間と同様の知能」を実現できているテクノロジーは存在しないことを「当たり前のこと」として認識している。

 その一方で、経営者やテクノロジーにそれほど詳しくない人は、AIによって、さも「いま、人間と同様のことができる」あるいは「今すぐにすごいことができる」と捉えてしまう傾向がみられる。AIは遠い将来の話、現在の話、数年後の話を明確に分けて捉えるべき。「今、すごく賢いAIが既に存在する」というのは相当な誇張であり、学術的に見ても誤りであることを理解すべきである。

ガートナー ジャパンはAIの歴史的変遷も図表で解説(同社サイトより)

誤解2:IBM Watsonのようなものや機械学習、深層学習を導入すれば、誰でもすぐに「すごいこと」ができる

 2011年2月にWatsonが「Jeopardy!」(クイズ番組)に挑戦し、勝利した。2016年3月にAlphaGoが囲碁の対局でトップ棋士に勝利した。これらを受け、こうしたものを導入すると、「すぐにすごいことができる」と捉える人がいるが、そのように単純ではないことを理解する必要がある。

 こうした「すごいこと」を成し遂げようとするなら、実際の「すごい」テクノロジーに加え、「すごい」エンジニアがいなければならない。AIのようなものは、人間に例えれば、赤ちゃんか子供であると捉えておくべきであり、うまく育てるためにも、育てる人の「スキル」が求められることを忘れてはいけない。

 なお、この1年で「チャットボット」に関する期待が高まっているが、「AIを搭載したチャットボット」というフレーズには要注意。現在のチャットボットと呼ばれるものは、あらかじめ用意したテキストを条件に応じて返す、といったレベルのものが多く、以前から存在する電話の自動音声案内をチャットベースにしたようなものまでが、AIと呼ばれている状況がみられる。人が応対しているものを何でもAIでできるといったレベルになるには、少なくとも10年以上かかる。


 また同社リサーチ部門バイスプレジデント兼最上級アナリストの亦賀忠明氏は、AIに関する高度なスキルを持つ人材の獲得競争が世界規模で起きていると指摘する。米国の機械学習技術者の給与は年収1000万円以上である一方、国内は米国の半分程度にとどまるといい、企業は「ハイスキル/ハイリターン」の考えを導入して優秀な人材を確保できなければ、競争力が将来的に低下していくとの見解を示す。

 AIの現状については「市場は『何でもAI』の状況にあり、多くのベンダーが宣伝文句に使っている」とし、「こうした宣伝に振り回されないよう企業はAIの理想と現実をまず正しく理解し、ハイスキル/ハイリターンを前提とした人材投資を中長期戦略として展開する必要がある」と解説している。

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